以下は、共同通信(2022年01月19日)からの引用です。
「マンション建設の反対運動中、現場責任者に暴行したとして逮捕、起訴され、その後無罪が確定した名古屋市瑞穂区の薬剤師奥田恭正(おくだ・やすまさ)さん(65)が、警察が保管しているDNA型や指紋、顔写真などのデータの抹消を国に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は18日「保管すべき必要性は示されていない」として3種類のデータの抹消を命じた。
代理人弁護士は「無罪確定後に抹消を命じる判決は初めてではないか」としている。
捜査上のDNA型データ保管は国家公安委員会規則などで運用されているのが現状で、識者からは法整備の必要性を指摘する声が出ている。
奥田さんは違法捜査で精神的苦痛を受けたとして、国と県に損害賠償も求めていたが、地裁は棄却した。
西村修(にしむら・おさむ)裁判長は判決理由で、無罪が確定した人のDNA型などのデータを継続的に保管する場合、余罪の存在や再犯の恐れなど具体的な必要性が示されるべきだと指摘。
「身体拘束の根拠となっていた被疑事実が審理の結果、否定され、確定した以上、それ以降の継続的保管の根拠が薄弱になると言わざるを得ない」と述べた。
その上で奥田さんについて、余罪や再犯の可能性を認めるのは困難で「データを保管すべき具体的必要性は示されていない」と結論付けた。
一方で、DNA型や指紋のデータベース化で「科学的捜査が可能となり、捜査の効率性、実効性が高まる」との判断も示した。
国側は国家公安委員会の規則に基づきデータを管理、運用していると主張していた。
判決後、奥田さんは「支援してくれた皆さまに感謝したい」と話した。
警察庁は「判決内容を精査して、今後の対応について検討していきたい」とコメントした。
判決などによると、奥田さんは2016年10月7日、自宅近くのマンション工事現場で、現場責任者の男性を突き飛ばしたとして、愛知県警に暴行容疑で現行犯逮捕された。DNAや指紋を採取された。
地裁は18年2月、「被害男性の証言を全面的には信用できない」として無罪を言い渡し、その後判決が確定した。
※DNA型記録取扱規則
DNA型情報を登録したデータベースの運用方法を定めた国家公安委員会規則で、2005年9月に施行。
運用の目的を「犯罪捜査」に限定し、対象者の死亡時か「保管する必要がなくなったとき」には、データを抹消しなければならないと定めている。
警察庁の犯罪鑑識官は、情報の漏えい防止のために必要な措置を講じなければならないとしている。」
裁判所のホームページには、掲載されないようですね↓
DNA型記録取扱規則は↓
判決文が読めないので、推測になりますが、その7条1項で、1号の「被疑者DNA型記録に係る者が死亡したとき」に続けて、「前号に掲げるもののほか、被疑者DNA型記録を保管する必要がなくなったとき」には、当該被疑者DNA型記録を抹消しなければならないと定められているのを、「わざわざ1号で死亡を明記した上で、2号でその他としているのだから、死亡に比肩する程、保管する必要がなくなったとき」と解釈するのか(国側)、「1号の死亡は当然のことを記載しただけで、特に意味はなく、具体的な保管の必要性がなくなったとき」と解釈するのか(男性側、判決)という問題でしょうね。
恐らく、最高裁まで行くことになり、最終的な結論が出るまでに、まだ何年もかかるのだとは思いますが、他の報道によると、諸外国では、きちんと法律で定められている様ですので、識者ではない私でも、単なる規則で、しかもこんなに漠然とした定めではなく、きちんと法律で具体的に定めるべきだとは思います。