以下は、共同通信(2021年02月25日)からの引用です。
「儒教の祖、孔子を祭る孔子廟(こうしびょう)のために那覇市が公有地を無償提供したことが、憲法の政教分離の原則に違反するかどうかが争われた住民訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人(おおたに・なおと)長官)は24日、「一般人から見て、市が特定の宗教を援助していると評価されてもやむを得ない」として違憲と判断した。
政教分離を巡る最高裁の違憲判決は、1997年の愛媛玉串料訴訟、2010年の空知太(そらちぶと)神社訴訟に続き3例目で、孔子廟に関する判断は初めて。
最高裁は、施設を所有する一般社団法人「久米崇聖会(そうせいかい)」と市の訴えを退け、使用料の全額免除は違法と結論付けた。
判決によると、14世紀に中国から渡来した職能集団「久米三十六姓」の子孫でつくる同会が13年、市の許可を得て中心部の松山公園に「久米至聖廟(しせいびょう)」を建設した。
住民の女性が提訴した。
判決で大法廷は、廟の外観が寺社に類似し、孔子の霊をあがめる年1回の祭礼のために建物が配置されているとして「宗教性が認められ、程度も軽微ではない」と指摘した。
市は観光資源としての意義や歴史的価値があると主張したが、判決は「かつての廟を復元したものではなく、文化財としての取り扱いを受けているわけでもない」と退け、無償提供の必要性や合理性はないとした。
免除される使用料は年額約576万円で社団法人側の利益は大きく、宗教的活動を容易にしたと述べた。
社会通念に照らして総合的に判断すると、憲法20条3項が禁じる国などによる宗教的活動に当たるとした。
裁判官15人中14人の多数意見。
今月定年退官した林景一(はやし・けいいち)裁判官が反対意見を付けた。
18年4月の那覇地裁判決が違憲と判断し、福岡高裁那覇支部判決も支持した。
※孔子廟(こうしびょう)
中国・春秋時代の思想家で、儒教の祖となった孔子を祭る建物。
孔子の死後、山東省・曲阜にあった旧居を廟に改築したのが始まりで、中国各地やアジアに広がった。
曲阜の孔子廟は、孔子の墓所などとともに世界文化遺産に登録されている。
日本では古代から教育機関に設けられ、江戸時代に儒教から発展した「朱子学」が幕府公認の官学になってからは、各地の藩校にも数多く建設された。
湯島聖堂(東京都文京区)や、足利学校(栃木県足利市)、旧閑谷(しずたに)学校(岡山県備前市)などにある孔子廟が著名だ。
※政教分離の原則
信教の自由を保障するために政府と宗教を分離し、国が宗教的に中立であることを求める原則。
憲法20条は、国や地方公共団体が特定の宗教団体に特権を与えたり、宗教的活動をしたりすることを禁じている。
憲法89条は、公金や公の財産を宗教団体に支出してはならないと定める。
国と神道が密接に結び付いた国家神道が軍国主義を支えた反省から、戦後の現行憲法に盛り込まれた。
判例では、完全な政教分離は難しく、関与が限度を超える場合は違憲だとされている。」
政教分離の原則ですか。
懐かしいですね。
私が司法試験に合格した年の憲法の論文試験の2問中の1問でした。
判決当日の夕方に見た時には、裁判所のホームページには掲載されていませんでしたが、今はもう掲載されていますね↓