以下は、朝日新聞デジタル(2019年3月18日)からの引用です。
「認知症などで判断能力が十分ではない人の生活を支える成年後見制度をめぐり、最高裁判所は1日、後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示した。後見人になった家族の不正などを背景に弁護士ら専門職の選任が増えていたが、この傾向が大きく変わる可能性がある。
同日開かれた制度の利用促進をはかる国の専門家会議で、最高裁が明らかにした。これまでは各家庭裁判所が親族らの不正を防ぐ観点から専門職の選任を増やしてきた。だが、制度の利用は低迷。こうした中で、国は2017年に利用促進の計画を策定し、見直しに着手した。利用者がメリットを実感できる仕組みに変える一環として、最高裁は今回初めて選任に関して具体的な考えを表明した。今年1月に各地の家庭裁判所に通知したという。
最高裁は基本的な考え方として、後見人にふさわしい親族など身近な支援者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましいと提示。また、後見人の交代も、不祥事など極めて限定的な現状を改め、状況の変化に応じて柔軟に交代・追加選任を行うとする。昨年6月〜今年1月、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会など専門職団体と議論を重ね、考えを共有したという。
最高裁家庭局は、後見人の選任は各裁判官が個々の事案ごとに判断するため「あくまで一つの参考資料」と説明する。ただ、今後、各家裁で運用方法を検討していくといい、最高裁の考え方に沿った選任への見直しが進むとみられる。
成年後見制度は、超高齢社会に認知症や障害がある人の財産管理や契約などを支援するため00年に導入された。しかし、認知症高齢者が500万人を超すと言われる中、成年後見の利用は約21万8千人(18年12月時点)にとどまる。
後見人には親族が自ら就任を望むことが多いが、家裁が親族を選んだ割合は23%(18年)にすぎない。見知らぬ専門職が後見人に選任されることへの反発は強く、財産管理だけでほとんど本人の生活支援がないまま高い報酬をとられることへの懸念も、制度利用を妨げる壁となっていた。
一方、各家裁は、本人の財産の使い込みなど、子や配偶者など親族らによる不正がピークの14年に全国で809件、約51億1千万円に上ったことなどを踏まえ、専門職の選任を進めてきた。
国の計画では、21年度までに全国の市区町村に設ける予定の「中核機関」で親族後見人の支援を担い、制度の理解不足による不正を防ぐことも想定。最高裁も中核機関の整備を前提に、親族らの選任を進めていきたい考えだ。
ただ、厚生労働省が同日発表した初めての実態調査(昨年10月時点)では、親族後見人を増やすカギとなる自治体の中核機関について、95%の市区町村が未設置で、今後の設置予定についても77%が「未定」と回答。中核機関設置が進まなければ、想定通りに見直しが進まない恐れがある。」
成年後見に関する研修の際に、近々、何か我々弁護士に不利になりそうな御触れが出るらしい、という話がありましたが、このことでしたか。
しかしながら、また仕事が減るのかと、嘆いていても、仕方ありません。
我々弁護士などの専門職が成年後見人に選任されるケースは、成年後見人にふさわしい親族がいない場合だけでなく、親族間で誰が成年後見人になるか争いがある場合、交通事故による損害賠償請求や遺産分割などの解決のために専門的な知識を要する場合、本人の資産が高額な場合など、様々です。
ただ、我々弁護士が、本人の成年後見人として、交通事故による損害賠償請求や遺産分割などの事件を解決しても、家庭裁判所が決定する成年後見人報酬は、代理人として事件を受任して解決した場合の報酬↓と比較すると著しく低額なので、必ずしもありがたい話ではありません。
http://morikoshi-law.com/bengosihiyou.html
むしろ、親族が成年後見人に選任され、その後見人から委任を受けて、代理人として事件を受任する方が、ありがたいというか普通の形ですし、成年後見人にふさわしい身近な親族がいるのであれば、親族が成年後見人になる方が、自然な形だと思います。
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