以下は、北海道新聞(2018/01/28)からの引用です。
「集団予防接種によるB型肝炎患者の救済策として、国が患者に支払う給付金に「格差」が生じている。損害賠償請求権を20年に制限する民法の除斥(じょせき)期間が壁となり、「発症から20年」を境に大幅に減額。長く苦しむ患者ほど救済されにくい矛盾に陥っている。患者がこの点を「不合理」と訴えた民事訴訟で、福岡地裁は昨年12月、減額を認めない判決を言い渡し、救済の道を広げた。全国訴訟の先駆けとなった札幌での提訴からまもなく30年。さらなる司法判断を待つまでもなく、国は早急に、被害者の立場で救済制度を見直すべきだ。
B型肝炎救済法は、B型肝炎に伴う慢性肝炎や肝硬変、肝がんなど病態に応じて給付額を設定。国を訴えて和解すると、給付金が受けられる。賠償請求権の起点は「発症時」で、20年を過ぎて提訴すると大幅に減額される。
しかし、症状がいったん沈静化した後に再発する例も10〜20%あるとされ、福岡訴訟の原告患者側は「いつ再発するか分からないのに、最初の発症が起点とされ、再発時に賠償請求権が消滅しているのはおかしい」と訴えてきた。
これについて福岡地裁判決は、発症時と再発時では病態が異なるため、「起点は再発時とすべき」との司法判断を初めて示し、発症時から20年以内に提訴した場合と同額の給付金を原告男性2人に支払うよう、国に命じた。
国が控訴し、訴訟は継続中だが、判決は格差解消に向けて一石を投じた。全国で集団提訴中の約80人が同様の主張をできるか、検討中という。
一方、発症後に病態が変化しないままの患者や死亡者には、今回の司法判断は適用できない。B型肝炎訴訟全国弁護団の佐藤哲之代表(札幌)は「除斥期間の適用自体を撤廃しない限り、救済されない患者が必ず出る」と指摘。最終目標の「撤廃」に向け、福岡地裁判決を足がかりに司法判断を積み重ねながら、救済の可能性を広げていく考え。ただ、患者に時間的な猶予はない。早期解決できるかは、政治決着できるかによる。
長期化の原因は国にある。B型肝炎訴訟は1989年に道内の原告5人が札幌地裁に全国で初めて提訴。原告勝訴の判決が2006年に最高裁で確定後も国は全面救済を拒否した。11年に原告団と国の基本合意で現在の救済の枠組みが整うまで23年かかった。
この間、原告側は、発症から20年を超す患者も含め、一律の解決を強く求めたが、重症患者の早期救済のためにも「一定の譲歩をせざるを得なかった」(弁護団)との経緯がある。当時、和解案を示した札幌地裁は「あらためて国会などの場で討議し、よりよい解決を」と求めたという。
基本合意の時点で、対象となる全国の患者数は推計40万人超、救済費用は約3兆円と試算された。国が承認した血液製剤の投与が原因でウイルス感染したC型肝炎訴訟の給付金は、対象者の推計が1万人超にとどまるせいか、提訴時期による格差はない。国の考え方一つなのではないか。
40万人超のB型肝炎患者のうち、昨年10月時点で提訴者の累計は約5万2千人、和解者は約3万1500人にとどまる。被害全体の解決には、患者を掘り起こすための検査態勢の充実や、医療費の助成など恒久対策も欠かせない。
「国が守りたいのは被害者ではなく、法律の規定なのでしょうか」。福岡訴訟の原告男性(59)は訴える。提訴から判決まで9年半。判決後の会見は体調を崩し、欠席した。時間ばかりが経過し、患者の苦しみだけが残る―。そんなことがあってはならない。」
我々弁護団以外に依頼をして、国の提示を鵜呑みにして、低額の和解をしてしまった方がいなければ良いのですが。
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