以下は、朝日新聞デジタル(2018年1月9日)からの引用です。
「現在書面で行われている民事裁判で、電子データやインターネットの活用が進むよう、最高裁は2018年度当初予算案に初めて約4900万円の調査費を盛り込んだ。諸外国に後れを取る「裁判の電子化」を進める方向で調査する。企業の経済活動を円滑化するほか、一般の人にも手続き期間が短縮されたり、簡略化されたりする利点がある。
訴状などの裁判書類は民事訴訟法で、原則「書面」で提出する、と定められている。最高裁は18年度、裁判手続きの電子化で、どのような効果が得られるかを本格的に調査。裁判書類に多く含まれる個人情報の流出や拡散を防ぐセキュリティー対策も調べるという。
最高裁は04年7月から約4年半、札幌地裁で法廷期日の変更や証人尋問の申し立てなどをネットで行えるよう試行。06年9月には東京地裁管内の簡裁で、借金の借り手に返済を命じる「督促手続き」をネットでできるようにし、全国にも広げてきた。
それでも、諸外国に比べ、立ち遅れは否めない。日本政府のまとめなどによると、米国は1990年代から州ごとに裁判手続きを電子化。シンガポールは00年から訴状の電子申請を義務付けた。韓国も11年に全民事裁判のやりとりを電子化し、原則、紙か電子データかを選べるという。
政府は現状のままでは国際競争に立ち遅れる、と危機感を抱く。企業活動のしやすさを示す世界銀行の「ビジネス環境ランキング」で日本はOECD加盟35カ国中24位(18年版)。特に「裁判手続き」は18点満点の7・5点、「裁判の自動化」は1点(4点満点)にとどまる。
国内外の裁判の電子化に詳しい桐蔭横浜大学法学部の笠原毅彦教授(法情報学)は「日本で最も電子化が進んでいないのが司法の分野で、他の先進国から20年近く遅れている。書面でやり取りしている部分は電子化し、口頭弁論を充実させることが大切だ」と指摘。日本弁護士連合会ITプロジェクトチームの宮内宏弁護士は「裁判所はこれまで、紙中心の手続きにこだわってきた。電子化で裁判を使いやすくするためには、広く国民を交えた議論が必要だ」と話している。
世界銀行のビジネス環境ランキング2018
@ニュージーランド(1)
Aデンマーク(2)
B韓国(3)
C米国(6)
D英国(5)
Eノルウェー(4)
Fスウェーデン(7)
Gエストニア(8)
Hフィンランド(9)
Iオーストラリア(11)
(24)日本(26)
*経済協力開発機構(OECD、35カ国)加盟国の順位。カッコ内は17年版の順位
民事裁判の電子化をめぐる主な動き
2001年 司法制度改革審議会が裁判電子化の検討を提言
2002年 最高裁が電子化に向けた計画策定を表明
2004年 札幌地裁が民事裁判の電子化試行を開始
裁判手続きの一部電子化を認める改正民事訴訟法が成立
2006年 東京地裁管内の簡裁で、支払い督促事件の電子化開始。10年11月までに全国へ拡大
2017年 政府が新成長戦略「未来投資戦略2017」で、電子化の検討を始め、17年度中に改革方
針を決めると表明
裁判電子化に関する政府の有識者会議が発足
2018年度 最高裁が裁判電子化の調査業務を予算計上へ」
裁判手続等のIT化検討会は↓
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/index.html
2004年7月から約4年半、札幌地裁で法廷期日の変更や証人尋問の申し立てなどをネットで行えるよう試行したのですか。
全然知りませんでした。
現在でも、訴状などの申立書類以外は、FAX提出が認められていますし、例えば、これをPDFファイルにして、電子メールで受送信するようにするとしても、スキャナー機能付きの複合機があるので、特段の面倒はありませんが、特段のメリットも感じません。
せいぜい、期限ギリギリの申立てを、時間外の夜間受付に持参しなくても良い、という程度のことでしょうか。
パソコンやスキャナーを持っていない人にとっては、かえって、電子化は、ハードルを高くするだけのことだと思います。
裁判所にとっても、特段のメリットがあるようには思えません。
結局、紙か電子データかを選べるという辺りで、お茶を濁すことになるのではないでしょうか。
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