以下は、朝日新聞デジタル(2016年9月29日)からの引用です。
「死亡事故が起きた医療機関が自ら原因を調べ、遺族や第三者機関に報告する「医療事故調査制度」が、10月1日で運用開始から1年を迎える。報告数は予想を大きく下回り、調査が十分に尽くされたのか疑問なケースもある。専門家は、調査を支援する仕組みを整える必要性を指摘する。
■少ない報告数 遺族に不信感
「なぜ母は亡くならなければならなかったのか、まったくわからない」
東京都の山本祥子さん(44)は今年3月、食道がんで入院中の母(当時68)が急死したことを受けて病院が実施した調査の報告書を手渡された。
母は昨年10月、静岡県内の病院に入院。1週間の抗がん剤治療の後、吐き気が治まらず、予定していた一時退院が延期となった。骨髄機能が落ち、入院から17日後に死亡した。
山本さんは、病院から医療事故調査制度に基づいて調査を始めることを伝えられた。病院の調査委員会から聞き取りをされることもないまま、調査結果をまとめた報告書を示された。
A4用紙2枚。容体急変の経緯は書かれておらず、骨髄の機能低下は「原因不明」とされた。再発防止策の記載もなかった。
「誰のための報告書なのか」と山本さんは憤る。4月、第三者機関の医療事故調査・支援センターに再調査を依頼した。
センターを運営する日本医療安全調査機構(東京)によると、今年8月までに提出された報告書は139件。事故原因の背景の記載がない例や、死因が検討されていない例もあるという。3月までの半年分の報告書49件の分析では、6件(12%)に再発防止策の記載がなく、遺族の意見の記載があったのは15件(31%)にとどまった。
機構の木村壮介常務理事は「ほとんどの病院は医療事故の報告書づくりが初めてで、報告書の質に差が出ている」と話す。九州大学病院医療安全管理部の後信(うしろしん)教授は「記載すべき内容を明確化し、院内調査を支える仕組みを整えるなど、適切な調査ができる環境づくりが必要だ」と指摘する。
調査の届け出数は8月までの11カ月間に356件。当初の想定の年間約1300〜2千件と比べ、大きな差がある。調査するかどうかは「予期せぬ死亡」と医療機関側が判断する必要があり、基準が明確でないことも影響している。遺族が調査を希望しても、その判断は医療機関側に委ねられているため、被害者団体からは不満の声が出ている。
「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」の永井裕之代表は「調査がきちんとされたのか検証していく必要がある」と語る。
■小規模病院の調査支援 事態改善図る
事態を改善しようと厚生労働省は6月に省令を改正。機構は、遺族から調査の要望を受けた場合、事故を起こした医療機関にそれを伝えるようにした。また、報告書の内容を機構がチェックし、医療機関に問い合わせができるようにした。届け出基準の統一化も進めている。
調査態勢を整えるのが困難な小規模病院や診療所を支援する地域もある。
藤田保健衛生大学(愛知)は3月、「藤田あんしんネットワーク」を発足させた。加盟する医療機関で医療事故が疑われる事案があれば、大学病院で医療安全担当をしていた看護師が連絡を24時間受け付ける。遺体の病理解剖や画像診断なども大学が協力する。
福岡県医師会は2012年7月から、県内の医療機関の院内事故調査委員会に、治療していた患者の病気に詳しい医師を大学病院などから派遣している。院内の委員と議論しながら報告書を作成する。12年7月〜昨年9月、計16件の医療事故を支援した。
この取り組みを主導した国立病院機構福岡東医療センターの上野道雄院長は「事実を究明することが、医療の信頼性を高めることにつながる」と強調する。
〈医療事故調査制度〉
すべての病院や診療所は、患者の「予期せぬ死亡」が起きたら、第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に届け出たうえで原因などを調査し、結果を遺族とセンターに報告する。遺族は結果が不服ならば、センターに再調査を依頼できる。センターは独自に調査をして、結果を遺族と医療機関に報告する。対象は死亡のみで、重体のケースは含まれない。」
1年間で1〜2000件の想定に対し、結局、11か月間で僅か356件ですか↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/431248546.html
遺族側の納得が得られない制度では、かえって、紛争が増えるのではないでしょうか。
遺族側にも当初から調査の申立権を認め、当初から院外調査という仕組みにしないと、実効性は、期待できないのではないでしょうか。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/425604545.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/400178819.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/357002337.html
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