以下は、毎日新聞(2016年9月12日)からの引用です。
「特殊詐欺事件でだまし取る現金の受け取り役である「受け子」として、詐欺未遂罪に問われた兵庫県尼崎市の会社員男性(35)に対し、福岡地裁(丸田顕裁判官)は12日、無罪(求刑・懲役3年)を言い渡した。
男性は福岡県警の「だまされたふり作戦」で逮捕されたが、丸田裁判官は「被告は被害者がだまされたと気づいた後に加担しており、罪に問えない」と判断。
捜査側に対しては「『だまされたふり作戦』の有効性は否定しないが、捜査は慎重に行うべきだ」と付言した。
男性は氏名不詳者と共謀して福岡県内の80代女性に対し、ロト6に必ず当選する特別抽選に選ばれたと誤信させ、参加するには金が必要などとして昨年3月25日に現金120万円をだまし取ろうとしたとして起訴された。
判決によると、女性は県警に相談して同月23日にだまされたふり作戦に協力し、同24日に指定された大阪市内のマンションに現金が入っていない荷物を配送。
男性は翌25日に荷物を受け取ったところを現行犯逮捕された。
丸田裁判官は「被告が荷物を受け取るよう指示を受けたのは24日以降だった」と認定。
「被告の加担後は、だます行為は行われておらず、荷物を受け取った行為は詐欺未遂の構成要件に該当しない」と結論づけた。
検察側の「被告は事件以前にも受け子をしており、包括的共謀が成立する」との主張には「指示役の男と被告との間に指揮命令系統やマニュアルが存在していた事実はなく、詐欺行為が組織化されたと言えない」として退けた。
福岡地検の吉田誠治次席検事は「上級庁と協議の上、適切に対応したい」とコメント。
男性の弁護士は「刑法の原則に沿って判断した判決だ」と評価した。
捜査困難化も
園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)の話
従来の特殊詐欺の受け子の裁判では、共同正犯の認定は無理でもほう助は認めるケースが多かったが、無罪は異例だ。
検察側は当然控訴するだろうから、上級審で覆される可能性もある。
判決を受けて、詐欺グループが巧妙に受け子への依頼の仕方を変える可能性もあり、捜査は難しくなるかもしれない。」
異例も何も、刑法の学者であれば、罪刑法定主義、構成要件該当性をきちんと判断するのは、当然のことではないのでしょうか。
まあ、だまされたふり作戦が、表面に出ないようにすることに、なるのだけのような気もしますが。
実際に現金が入っている荷物を配送した上で、「まさかだまされているとは思っていませんでしたが、念のため、警察に確認をお願いしたところ、だまされていることが分かりました。」とか。
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