以下は、朝日新聞デジタル(2016年8月25日)からの引用です。
「東京都中央区の運転手派遣会社に勤務していた男性(69)が「業務が同じなのに60歳未満の運転手より賃金が安かったのは違法だ」として、会社に400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁であった。
吉田徹裁判長は、年齢の若い労働者を賃金で優遇することは「企業の裁量の範囲内で、不合理な差別とは言えない」として、男性の請求を棄却した。
判決によると、男性は別の会社を60歳で定年退職した後の2008年、有期契約の運転手として就職し、14年まで勤めた。
賃金は、60歳未満の運転手と比べて8割程度だった。
判決は「人材の処遇には企業の裁量が広く認められるべきだ。定年後に賃金水準が下がるのは日本では一般的」と指摘。
男性が就職時に労働条件を認識していたことなどから「今回の事実関係では、年齢による賃金格差は権利侵害にはならない」とした。」
以前、正反対の結論の判決があり、ブログで取り上げたように思いましたが、記憶違いでした。
恐らく、当時、相当話題になり、新聞などにも、解説などがたくさん出ていたので、コメントするまでもないと思ったのでしょうね。
という訳で、以下は、同じく、朝日新聞デジタル(2016年5月13日)からの引用です。
同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決
「定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を払うよう勤務先の横浜市の運送会社に求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。
佐々木宗啓裁判長は「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」と認定。
定年前の賃金規定を適用して差額分を支払うよう同社に命じた。
労働契約法20条は、正社員のような無期雇用で働く人と、再雇用など有期雇用で働く人との間で、不合理な差別をすることを禁じている。
弁護団によると、賃金格差について同条違反を認めた判決は例がないという。
弁護団は「不合理な格差の是正に大きな影響力を持つ画期的な判決だ」と評価。
定年を迎えた社員を別の給与水準で再雇用することは多くの企業が慣行として行っており、今回と同様の仕組みをもつ企業に波紋が広がりそうだ。
判決によると、3人は同社に21〜34年間、正社員として勤務。
2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。
業務内容は定年前と全く同じだったが、嘱託社員の賃金規定が適用され、年収が約2〜3割下がった。
判決は「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と指摘。
この会社については「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、特段の事情はなかったと判断した。
コストを抑制しつつ定年後の雇用確保のために賃下げをすること自体には「合理性はある」と認めつつ、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はないと指摘。
「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」と述べた。
会社側は「運転手らは賃下げに同意していた」とも主張したが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情にはあたらないと判断した。
運送会社は判決について「コメントしない」としている。」
前者の判決は、「定年後に賃金水準が下がるのは日本では一般的」と指摘しているのに対して、後者の判決は、「業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はない」と指摘しています。
ということは、立証の違いということでしょうか。
前者の判決は、「年齢の若い労働者を賃金で優遇すること」の是非を検討しているのに対して、後者の判決は、「定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたこと」の是非を検討しているように読めます。
ということは、主張の違いということでしょうか。
それとも、裁判官の価値観の違いということでしょうか。
どちらの事件も、原告・被告ともに、引くに引けないと思いますが、さて、どうなるのでしょうか。
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