以下は、朝日新聞デジタル(2016年8月25日)からの引用です。
「生まれた子との間に「親子関係がない」とする「嫡出(ちゃくしゅつ)否認」の訴えは夫しか起こせない、とした民法の規定によって娘や孫が「無戸籍」の状態になり精神的苦痛を受けたとして、兵庫県内に住む60代の女性ら4人が24日、国に計220万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴した。
「法の下の平等」や「結婚や家族における男女の平等」などを定めた憲法に違反すると主張。国会が法改正を長期間怠ってきたと訴えている。代理人の作花知志(さっかともし)弁護士によると、この規定の違憲性を問う訴訟は過去に例がないという。
原告は女性と30代の娘、2人の孫。訴状によると、女性は約30年前に夫の継続的な暴力から逃げて別居し、離婚の成立前に別の男性との間に娘を産んだ。離婚前に生まれた子は、民法の規定により夫の子と推定されるため、女性は娘の出生届を出すことを断念。娘は無戸籍となり、その子である孫2人も無戸籍となった。その後、元夫が死亡したことが3年前に分かり、娘の戸籍を作る手続きを進めた結果、3人の無戸籍が解消された。
嫡出否認の訴えは、家父長制度を廃止した戦後の民法改正でも残された。父子関係を否定するには、親子関係がないことを確認する訴えや、実の父親に認知を求める方法があり、原告側も実父に子の認知を申し立てた。だが手続き中に裁判官から「元夫の『自分の子ではない』という証言がないと進められない」と言われ、断念したという。
原告側は、妻や子も嫡出否認の訴えを起こすことができれば、無戸籍を避けられたと主張。無戸籍になることで選挙権が認められず、銀行口座を開けないなどの不利益があるとして、国が人権問題として取り組むべきだと訴えている。
■「社会変える契機に」
嫡出否認の訴えの前提には、「嫡出推定」がある。「離婚から300日以内に生まれた子は、前夫の子」とみなす民法の規定だ。夫が離婚を認めなかったり、夫との関わりを避けたりしている場合は女性が出生届を出せず、子が「無戸籍」となる原因になってきた。法務省によると、今月10日時点で全国に702人が確認され、8割は未成年だ。
原告の女性の娘も30年以上無戸籍だった。「同じように苦しんできた人たちが救われ、社会を変えるきっかけにしたい」。女性は提訴前、朝日新聞の取材にそう答えた。
家族に関する民法の規定をめぐっては、婚外子の相続分差別や女性の再婚禁止期間をめぐり、最高裁が違憲と判断し、法律が改正される例が相次いでいる。一方、嫡出推定や嫡出否認の規定は、国会で議論されることはあったが、法改正の目立った動きはない。金田勝年法相は23日、「家族法の根幹に関わる重要な問題。慎重に検討をしたい」と述べるにとどめた。
棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「夫を家の中心として、家庭の平和を保つという古い時代の考えが根底にある。学説的にも不合理性が以前から指摘されてきた。嫡出推定を含めて実態に合わせた改正を検討するべきだ」と話す。
■家族をめぐる近年の最高裁の判断
2013年 9月
「婚外子の相続分は結婚した男女の子の半分」とした民法の規定は違憲とする決定
12月
性別変更した男性と妻が、第三者の精子を提供されてもうけた子を「男性の子」とする決定
14年 7月
DNA型鑑定で血縁がないと証明されても、それだけで父子関係は取り消せないとする判決
15年12月
「離婚した女性は6カ月間は再婚できない」とする民法の規定について、100日を超える部分は違憲とする判決」
私が戸籍関係に詳しい弁護士ではないからかも知れませんが、妻や子も嫡出否認の訴えを起こすことができれば、なぜ無戸籍を避けることができたのか、わかりません。
嫡出否認の訴えであれば、夫に内緒で、進めることができたのでしょうか。
仮に、夫婦の間の子供ではないと認められたとしても、離婚が成立していない以上、夫と一緒の妻の戸籍に入るしかないのではないでしょうか。
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