以下は、日本経済新聞(2016/8/9)からの引用です。
「法務省の調査で2015年の新人弁護士の平均年収は568万円となり、5年前の10年に比べ210万円減ったことがわかった。
新人ばかりではなく、全体的に弁護士の平均年収は低下傾向にある。
収入源だった消費者金融への過払い金返還請求の業務が一巡したほか、法曹人口の拡大で「弁護士余り」の状況が続いていることも背景にあるとみられる。
15年の弁護士の平均年収調査は、法務省が日弁連などの協力を得て今年3月に実施。
弁護士2万1313人に調査票を送り、7912人から回答を得た(回収率37%)。
登録1〜15年目の平均年収を分析。
1年目は568万円で、10年の778万円よりも27%減った。
登録5年目は1412万円で、同じく754万円(35%)下がった。
登録10年目は2251万円、登録15年目は3085万円となり、それぞれ406万円(15%)、617万円(16%)減った。
年収2千万円を超えた時期は10年は登録5年目だったが、15年は登録10年目で、弁護士が以前ほど稼げない実態が浮き彫りになった。
法務省は15年と10年の平均年収について「調査回答率が異なるため単純比較はできない」としつつも、10年は過払い金の返還請求などの債務整理案件がピークを迎えており、「その反動が出た」と分析している。
最高裁は06年、利息制限法の上限金利(年15〜20%)と出資法の上限金利(29.2%)の間の「グレーゾーン金利」を原則無効と判断。
債務者が利息制限法を超えて払った金利は過払い金となった。
借り手が貸金業者から取り戻す動きが急増し、相談や訴訟などを担う弁護士にとって重要な収入源の一つだった。
一方で背景に「弁護士余り」を指摘する声もある。
15年の弁護士数は3万6466人で、10年よりも7638人(26%)増えている。
政府は02年、法曹人口の拡大を目指し、司法試験の年間合格者数の目標を3千人とする司法制度改革の閣議決定をした。
しかし、弁護士の活動領域が想定よりも広がらなかった。
若手が法律事務所に入れないなどの問題も起き、政府は13年に目標を撤回した。
日本弁護士連合会は「法的需要が伸びない中で弁護士の供給が増えたことも収入低下の一因だ」としている。」
これが手取りの年収であれば良いのですが、金額からの印象では、年収というのは、単純に、売上から経費を差し引いた所得のことのように思います。
だとすると、圧倒的多数と思われる個人事業主である弁護士は、その中から、所得税と地方税を支払い、更に、国民年金や国民健康保険料を支払わなければならないので、手取りの年収は、大幅に目減りすることになります。
でもって、10年前と比べると、登録1年目は568万円で778−568=210万円(27%)減、、登録5年目は1412万円で754万円(35%)減、登録10年目は2251万円で406万円(15%)減、登録15年目は3085万円で617万円(16%)減ですか。
弁護士大増員時代を迎える前に、顧問先等、ある程度の基盤を築けた登録10年目以降は、大幅減に見舞われずに済んでいるのに対して、弁護士大増員時代に弁護士になった登録1年目、5年目は、壊滅的な減少率ですね。
それでも、若手の弁護士は、元々、経済的に楽ではないことを覚悟して、生活設計や事務所経営をしているので、金銭的な不祥事は、余り起こさないのだと思います。
ベテランの弁護士と比べると、大金を預かる機会が比較的少ない、ということもあるかも知れません。
一方、ベテランの弁護士は、それまで右肩上がり(からの横ばい)で推移していたものが、突然、年間500万円前後も収入が減った訳で、「元々、弁護士の仕事は一発屋。そのうち、大きな事件が舞い込んで来て、勝てばすぐに挽回できる。」などと考え、大幅な方向転換をしないでいるうちに、というか、家族などのこともあり、容易にできないでいるうちに、あっという間に預貯金は底をつき、依頼者のお金に手を出してしまう、ということなのではないかと思います。
それにしても、こういう報道を目の当たりにすると、頭が良ければ良いほど、多大な費用と年月とリスクを背負ってまで、司法試験を目指そうとは、思わないでしょうね。
司法が弱体化して、得をするのは、誰でしょうか。
このブログの筆者のホームページはこちら