以下は、Sponichi Annex(2016年6月1日)からの引用です。
「覚せい剤取締法違反罪に問われた元プロ野球選手の清原和博被告(48)の判決公判が31日、東京地裁で開かれ、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役2年6月)の有罪判決が言い渡された。
弁護側が求めた保護観察は付かなかった。
注目されたのは、弁護側が求めていた保護観察が付くかどうかだった。
吉戒純一裁判官は、なしとする判決を下し、「自助努力による更生がふさわしく、十分に立ち直りが可能だ」と理由を述べた。
保護観察付きの執行猶予は、通常の執行猶予に比べて厳しいとされるため、弁護側が求めるケースは異例だった。
執行猶予期間が終わるまで、国の一時的な監督下で更生を目指すことになり、自由が制限される。
逆に言えば、国が社会復帰を支援する制度でもあり、清原被告側はこちらの面に目を向けたようだ。
40代の覚醒剤の再犯率は高い。
清原被告は初公判で「(覚醒剤を)やめるには自ら命を絶つしかない」というほどの依存性だったことを明かし、「国の更生プログラムなど、薬物を断つためには何でもやりたい」と話していた。
通常の執行猶予となり、自力での更生を目指す今後について「誘惑と闘い続けなければいけないつらい現実が待っている」とみる識者もいる。
一緒に住むなどして更生を支える家族がいない場合、執行猶予が長めになったり保護観察が付くことはあるが、清原被告には付かなかった。
司法統計によると、14年に覚せい剤取締法違反罪に問われて執行猶予判決を受けたのは3686人。
このうち保護観察が付いたのは1割強の439人だった。
嵩原安三郎弁護士は判決について「清原被告には(同居する)家族はいないが知人らの支援もあり、有名人なので衆人環視という状態になるので、保護観察まではいらないという判断だったのではないか」と解説した。
確かに衆人環視の状態ではあるが、清原被告に必要とされるのは誘惑に打ち勝つ強い意志だ。
▼保護観察
保護観察官と民間の保護司らが連携し、罪を犯した人や非行少年の更生を支援する制度。
保護観察付き執行猶予判決を受けた人や、刑務所から仮釈放された人らが対象。
法務省の2015年版犯罪白書によると、刑事裁判で14年にあった執行猶予判決のうち、保護観察付きの割合は10%。覚醒剤使用者の場合、定期的な尿検査を含めた国の更生プログラムの受講を義務付けられることが多い。」
私は、刑事弁護に詳しい弁護士でも、覚せい剤事犯に詳しい弁護士でもありませんが、本件のような事案では、執行猶予になるのは、当然のことです↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/433572761.html
初犯の場合等、初度の執行猶予を付すことができる上限の懲役3年よりも短い2年6月という検察官の求刑も、まあ、執行猶予で、ということです。
実刑判決の場合、それなりの酌むべき情状を弁護人側で立証すれば、検察官の求刑の8割程度の刑期となるのが通常ですが(但し、検察官の求刑に拘束される訳ではないので、求刑を超える判決ということもあります)、執行猶予付き判決の場合、検察官の求刑どおりの刑期というのが、殆どです。
実刑判決の場合と同様に、刑期を短くすることができない訳ではありませんが、情状酌量したからこその執行猶予なのだから、刑期まで短くはしないよ、ということもあると思いますし、刑期を短くしない方が、再犯の予防につながる可能性が高まるのではないか、ということもあると思います。
懲役2年6月で、執行猶予3年では短すぎ、最長の5年では長すぎる感じなので、執行猶予4年というのも、ごく普通です。
清原被告側は、自ら保護観察付きの執行猶予を求めたとのことですが、実務的には、初度の執行猶予で、保護観察付きの判決というのは、一緒に住むなどして更生を支える家族がいない場合よりは更に狭く、帰る場所がない場合などに限られるように思います。
実際、1人暮らしの覚せい剤の自己使用の初犯のケースで、情状証人や家族の手紙など一切なしでも、通常の執行猶予判決という経験は、一度ならずあったと思います。
いい歳した大人が、甘えてるんじゃないよ、ということなのかも知れませんし、多少不安な要素があるからといって、いちいち保護観察付きにしていては、制度としてパンクしてしまう、ということなのかも知れませんし、単に順番通りということで、何も考えていないのかも知れません。
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