以下は、朝日新聞デジタル(2016年3月2日)からの引用です。
「捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)端末をひそかに取り付ける追跡捜査が一審で「重大な違法」とされた連続窃盗事件の控訴審判決が2日、大阪高裁であった。
横田信之裁判長(後藤真理子裁判長代読)は「重大な違法とまではいえない」と判断。
関係証拠を排除したうえで男性被告(44)を実刑とした一審判決の結論は変えず、被告側の控訴を棄却した。
被告側は上告を検討する。
一審段階で違法とする判断が各地で相次ぐ中、実質的に逆転判断となった大阪高裁判決は高裁レベルでは初判断とみられる。
被告は2012年2月〜13年9月、知人らと大阪や兵庫など6府県で事務所侵入や車上荒らしを繰り返したとして窃盗などの罪に問われた。
大阪府警は13年5〜12月、裁判所の令状を取らずに捜査対象者の車やバイク計19台にGPS端末を装着し、多い端末では1200回以上にわたって位置情報を検索した。
高裁判決は、犯行グループが夜間に高速で広範囲に動き回り、摘発への警戒を強めていた事情を踏まえ、「(任意捜査の)尾行や張り込みだけでなく、位置探索の必要性が認められる状況だった」と指摘。
さらに、GPS捜査で得られる情報は車両の居場所に限られ、個人の行動が明らかになるものではないと言及。
プライバシー侵害の程度は必ずしも大きくないとし、GPS捜査を違法とする司法判断が当時なかった点も考慮して「違法と解釈する余地がないわけではないが、重大な違法があるとはいえない」と述べた。
ただ、捜査員がGPS端末の着脱のため私有地に立ち入った点は「違法の疑い」があり、その手続きは「甚だ遺憾」とした。
大阪地裁は昨年6月、大阪府警が令状なしに捜査対象者の車やバイクにGPS端末を装着し、位置情報をもとに追跡した捜査を「重大な違法」と判断。
捜査資料の一部を証拠から排除したが、残る証拠から有罪と認定して懲役5年6カ月とし、GPS捜査は「令状を得れば適法に行う余地はあった」と述べていた。
控訴審で被告・弁護側は、位置情報をいつでも正確に把握・蓄積できるGPS捜査はプライバシーの侵害にとどまらず、刑事訴訟法上、捜査機関が令状を得ればできる捜索や差し押さえ、検証のいずれにもあたらないと指摘。
法的根拠がない以上は仮に令状が出ても許されず、検察の起訴自体を退けるべきだと主張していた。」
13年5〜12月の8か月の間に、1200回以上にわたって位置情報を検索しても、プライバシー侵害の程度は必ずしも大きくなく、重大な違法があるとはいえないのですか。
犯行グループが摘発への警戒を強めていた事情を踏まえ、位置探索の必要性が認められる状況だったと指摘しているところからすると、犯罪グループだったのだから仕方がないでしょうということのようですが、警察に目をつけられたら、令状がなくても、GPS捜査OKという社会は、気持ちが悪いと思うのは、私だけでしょうか。
通信傍受は、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」によって、ようやく法的根拠を与えられ、厳格な要件を満たした傍受令状により、初めて認められることになっているのですが…。
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