2016年01月29日

出生届未提出 生命脅かされる…主張認め簡裁決定取り消し


以下は、毎日新聞(2016年1月19日)からの引用です。

「前夫の暴力を恐れて娘の出生届を33年間提出できず戸籍法違反に問われた神奈川県内の母親について、横浜地裁(松井英隆裁判長)は19日、過料5万円を科した藤沢簡裁の決定を取り消した。

横浜地裁は「母親が娘の存在や住所を前夫に知られ、生命を脅かされるのを恐れて届け出なかったことにはやむを得ない理由がある」として、即時抗告した母親側の主張を全面的に認めた。

同日記者会見した弁護団によると、母親は前夫から逃れ1980年に九州地方から神奈川県に移住。

離婚が成立しない中、82年に別の男性との間に娘が生まれた。

民法772条は「婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定する」と定めており、戸籍取得には前夫の証言が必要とされたことなどから出生届の提出を断念したという。

藤沢簡裁は「子と母親の親子関係は出生時に確定している」ため、届け出期間を過ぎた「正当な理由とは言えない」としていた。

娘の女性(33)は「出生届を出したくても出せなかった母の事情が認められ、心から安心できた。無戸籍の人のつらい事情を裁判官に理解してほしい」と話した。」




戸籍法第49条は、「出生の届出は、14日以内(国外で出生があつたときは、3箇月以内)にこれをしなければならない。 」と定めており、同法135条は、「正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、5万円以下の過料に処する。」と定めています。

簡裁は、本件での事情は、上記条項の「正当な理由」にあたらないと判断したのに対して、今回の地裁は、「正当な理由」にあたると判断したことになりますが、何でもかんでも「正当な理由」にあたると判断した訳ではありません。

でも、届出が遅れたからと言って、いちいち過料に処するものなのですかね。

例えば、離婚事件や相続事件などの家事事件に関しても、「正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、5万円以下の過料に処する。」という条項がありますし(家事事件手続51条第3項)、民事事件に関しても、「正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する。」という条項がありますが(民事調停法34条)、出頭しなかったら過料に処されたという話は、聞いたことがありません。

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posted by 森越 壮史郎 at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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