以下は、朝日新聞デジタル(2015年12月8日)からの引用です。
「医師法違反の罪で略式起訴されたタトゥー(刺青(いれずみ))の彫り師が無罪を訴えて法廷闘争に踏み切る。医師免許がないとダメという捜査側に対し、意識の変化を挙げて反論する予定だ。タトゥーを他人に彫る行為は医業か、それとも芸術か。
■「仕事と認めて」略式命令拒む
法廷で争うのは大阪府吹田市のデザイナー増田太輝(たいき)さん(27)。高校2年の時、タトゥーの実演を音楽ライブで見て、現代的なデザインに魅せられた。会社勤めの傍ら独学でデザインを学び、4年前に店を開いた。衛生面に気をつけ、針やインク皿は使い捨て。「暴力団関係者お断り」の同意書もつくった。客は20〜40代が多く、ファッション感覚で入れていくという。父の命日を入れてほしいとの依頼もあった。
ところが大阪府警は今年4月、タトゥー用具の消毒薬を売る業者の薬事法違反事件の関係先として、増田さんの店を捜索。その後、増田さん自身が医師法違反容疑で取り調べを受け、昨年7月〜今年3月に女性3人に店でタトゥーを入れたことが違法行為とされ、8月に略式起訴された。
いったんは略式起訴を受け入れたが、「自分の仕事を犯罪と認めるのか」と疑問が募った。弁護士に相談し、9月に簡裁が出した罰金30万円の略式命令を拒み、正式裁判を申し立てた。今月25日に公判前整理手続きが始まる。
体に針を入れる以上、免許制のような規制はあるべきだと思う。でも、医師免許まで求められるのは違うと感じる。「僕にとっての表現行為の一つ。まっとうな仕事と認めてほしい」
■法に規定なく解釈巡り争い
医師法は「医師でなければ医業をしてはならない」と定めるが、タトゥーを医業とする明文規定はない。では、検察側は何を根拠に起訴しているのか。
厚生労働省は2001年、眉や目尻に墨を入れる「アートメイク」のトラブルが相次いだのを受けて、「針先に色素を付けながら皮膚の表面に色素を入れる行為」は医師しかできないとの通達を出した。「保健衛生上、危害が生じる恐れがある」との理由だ。警察当局はタトゥーにもこの通達が当てはまると判断。兵庫県警が10年7月、暴力団組員の彫り師を初めて医師法違反容疑で逮捕した。その後、摘発された事例も多くが暴力団関係者だった。
増田さんの主任弁護人、亀石倫子(みちこ)弁護士は「タトゥーは長い歴史をへて技術が改善され安全性も高まり、社会に浸透してきた。現行の法解釈を当てはめ続けるのは強引。これを是とすれば、彫り師という職業自体が成り立たない」と話す。
■日本での印象、年代で違いも
サッカーのベッカム選手や、歌手のレディー・ガガさんらタトゥーを入れた外国人も多いが、海外の法規制はどうか。関東弁護士会連合会(関弁連)の調査によると、タトゥー業者は米国の多くの州でライセンス制、英国では登録制をとり、医業とは異なる枠組みで規制しているという。
増田さんの弁護団は、医師法による一律規制は妥当か、刑罰を科すほどの違法性があるかも争い、憲法が保障する「職業選択の自由」などの観点からも無罪を訴える方針だ。
とはいえ、日本ではまだタトゥーへの抵抗は根強い。関弁連の昨年の意識調査では、タトゥーのある人を見て「怖い・不快」と感じた人は87・7%。55・7%が「アウトロー」を思い浮かべる。ただ、20代に限ると38%が芸術やファッションを連想すると答えた。「イレズミの世界」の著者、山本芳美(よしみ)・都留文科大教授(文化人類学)は、「日本のタトゥーの技術の高さは海外でも評価されている。そんな文化を地下に潜らせていいのか。今回の裁判が考える機会になれば」と注目する。
厚生労働省の法令等データベースサービス↓というのがあるそうですが、なかなか便利そうですね。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/
キーワード検索してみたところ、こちらの通達↓が、根拠となっているようです。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1344
何か見たことがあると思ったら、脱毛エステの事件の時に調べたものと、同じ通達でした↓
http://morikoshi-law.com/solution_5.html
依頼者に有利になるための材料は、できるだけ探し出して主張するのは当然ですが、いっときの役所の課長さんの判断で、犯罪の構成要件が決まるというのは、罪刑法定主義の観点からして、いかがなものでしょうか。
さて、どうなるでしょうか。
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