以下は、毎日新聞(2015年12月5日)からの引用です。
「集団予防接種によるB型肝炎訴訟で、発症から20年が経過した慢性肝炎患者に国が示す和解金を不服として、原告約30人が和解には応じずに大阪地裁で争う方針を固めた。20年が経過した患者は、法律により和解金が大幅に減額される。原告側は症状が重症化するなど再発した時点を「発症時期」と見直すことで、20年未満とみなされる患者が増えると主張し、救済内容の拡大を目指す。
大阪の弁護団が取材に明らかにした。患者側が和解に応じず、国と争うのは異例。注射器の使い回しでB型肝炎に感染した人は推定で40万人以上とされ、弁護団は「全国的に同じ動きが出てくる」と話す。
慢性肝炎の場合、和解金は発症から20年未満が1250万円だが、20年以上は150万〜300万円に減額される。厚生労働省によると、今年3月までに、20年が経過したと判断された慢性肝炎患者205人の和解が成立した。
ただ、国の救済策の遅れで和解金を求める提訴が遅れた例や、長い年数を経て重症化する患者もいる。「年数で差のない解決」を求める原告は、国から示された和解案を受け入れずに保留している。
大阪の弁護団によると、発症時期について争うのは、近畿地方の30〜70代の男女約30人。慢性肝炎と診断した当時のカルテが医療機関にないなど、「20年以上」の根拠が不明確▽症状が再発した時点を発症時期とすべきだ−−などと主張する方針。
B型肝炎訴訟を巡っては、一定の条件を満たす肝がん患者については、再発時点を発症時期とみなすことで、今年3月に原告側と国が合意した。弁護団の奥村秀二弁護士(大阪弁護士会)は「長く苦しんだ被害者が十分に救済されないのは不合理だ。肝がん同様、慢性肝炎でも再発時を発症時期とするなど、見直しを求めたい」と話す。
20年で線引きされているのは、被害の発生から20年が経過すると、損害賠償の請求権が消滅するという民法の「除斥期間」を国が主張しているためだ。2011年に札幌地裁であった和解協議で国が主張し、当時の原告団は強く反論した。政治決断による解決を目指す動きもあったが、同年3月に東日本大震災が発生。社会の混乱などを背景に、原告団は「苦渋の決断」で和解案を受け入れ、国と合意した経緯がある。この合意を基に特別措置法で救済制度が定められ、提訴すれば国が和解に応じる方針を示している。
「つらい時期を発症の基準に」
「本当につらい思いをした時を発症時期の基準にしてほしい」。原告の一人、京都府内に住む40代男性はそう訴える。
男性は10代で「慢性肝炎」と診断された。だが肝機能の数値に異常はなく、体調も問題なかった。
しかし、30代だった2006年に急変し、下痢や発熱が続いた。検査すると肝機能の数値が異常に高く、約1カ月入院した。仕事を休み、妻がパートに出た。その後、数値は落ち着いたが、突然上がって重症化する不安は消えない。肝炎ウイルスの増殖を抑える薬も毎日飲む。
11年の基本合意を報道で知り、13年に提訴した。国は10代で慢性肝炎と診断されてから20年が経過しているとして、和解金300万円を示した。男性は「10代の時は慢性肝炎の自覚症状はなかった。裁判所は実情を考慮し、発症時期を見極めてほしい」と話す。
代理人の玉田欽也弁護士(大阪弁護士会)は男性の症状が06年に急変したことについて、「ウイルスが変異して症状が悪化する『劇症化』の可能性が高い。変異は新たな被害であり、(20年の)起算点はそこにすべきだ」と強調する。
【ことば】B型肝炎訴訟
集団予防接種の際に注射器の使い回しで、多くの人がB型肝炎ウイルスに感染。最高裁は2006年、使い回しを放置した国の責任を認定、各地で集団訴訟が相次いだ。12年1月、国が病態に応じた給付金(和解金)を支払うことを定めた特措法が施行。1948〜88年に受けた予防接種で感染した人や、母子感染した子が国の救済対象になった。裁判での和解が必要で、これまでに2万6000人以上が提訴している。」
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