以下は、朝日新聞デジタル(2015年12月2日)からの引用です。
「経営するオイルマッサージ店で女性客を暴行したとして、強姦(ごうかん)や強制わいせつなどの罪に問われた土屋和朗被告(45)=宮崎市恒久=の判決が1日、宮崎地裁であった。瀧岡俊文裁判長は「反省がみられず、再犯の恐れも懸念される」として、懲役11年とビデオ原本4本の没収(求刑懲役13年、ビデオ原本4本の没収)を言い渡した。
判決によると、土屋被告は2010年4月〜13年12月、自宅に併設するオイルマッサージ店を訪れた女性客5人に対し、マッサージと称して性的暴行を加え、その様子をビデオカメラで撮影するなどした。
ビデオについて判決は、被害者とトラブルが生じたときに被告が自分に有利な証拠になり得るという認識があった、と指摘。「映像を確保することで犯行を心理的に容易にした」と判断し、没収を認めた。
土屋被告は無罪を主張していた。弁護人は判決言い渡し後、「故意や暴行の有無に事実誤認があり、控訴も検討する」と述べた。ビデオについては「犯行を促進させておらず、裁判所の解釈は間違っている」と話した。
公判では、被告が撮影したビデオの原本の扱いをめぐって、被害者保護を重視する検察側と被告の防御権を訴える弁護側の応酬が続いた。法曹関係者の間でも意見が割れている。
原本は、弁護側が一時的に捜査当局に提出し、複製された後に返却された。公判では複製が証拠採用された。検察側は6月の公判で原本の没収を要求。地裁も提出を求めたが、弁護側は「複製にはない画像や音声が記録されている可能性があり、押収を拒める『秘密』にあたる」と拒んだ。
地裁は9月に提出を命令し、福岡高裁宮崎支部もこれを支持。最高裁は11月に弁護側の特別抗告を退け、地裁は原本を差し押さえた。
犯罪被害者支援弁護士フォーラム(東京)は10月、地裁の提出命令を支持する声明を出した。フォーラムの共同代表、山田広弁護士は「内閣府の犯罪被害者等基本計画では、『刑事司法は犯罪被害者等のためにもある』と明記された」と指摘。「ビデオの提出拒否は、被害者の権利への理解を著しく欠いている」と非難する。
日弁連犯罪被害者支援委員会事務局長の山本剛弁護士も「原本が被告の手元に残れば、被害者は流出の恐れや報復材料に使われる不安から解放されない」と話す。
一方、元日弁連刑事弁護センター委員長の前田裕司弁護士は「被害者の権利を主張するのは検察。被告人の利益を守り抜くのが弁護士の責務で、提出拒否に特に問題はない」と話す。
元東京高裁判事の川上拓一・早稲田大大学院教授(刑事訴訟法)は「被告の利益か被害者の権利か、という問題が提起された」とし、「被害者参加の法整備が進み、性犯罪の厳罰化の議論も法制審で進む中、どこまで被告の利益を守るのか。今後、論点が同じ訴訟が増えることが予測される」と指摘した。」
この事件の続報ですね↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/412725598.html
1月に女性の証人尋問をしているのに、その後、判決まで、随分日数がかかったと思ったら、ビデオの原本の扱いに関する応報があったのですね。
私は、この点につきコメントできるような知見も信念を持ち合わせていませんが、犯罪被害者支援委員会の意見と、刑事弁護センター運営委員会の意見とが、真っ向から対立するのは、至極当然のことで、日常茶飯事のことです。
ところで、任意に、ビデオを捜査当局に提出したのは、被告人や弁護人としては、そのビデオが、同意の下であることの動かぬ証拠だと思ったからこそだと思いますが、それでも起訴され、こうやって有罪判決が言い渡されるのは、どうしてなのでしょうか。
感性の違いなのでしょうか。
だとすると、ベテラン揃いの高裁の裁判官の感性は、どちらに転ぶでしょうか。
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