以下は、朝日新聞デジタル(2015年8月14日)からの引用です。
「学校のトラブルで訴えられたり、賠償金を請求されたりする事態に備え、教職員向けの共済・保険加入者が増えている。
従来、責任を問われるのは学校の設置管理者である自治体や学校法人だったが、専門家は「個人に責任を求める動きがある」と指摘。
自分の身は自分で守るという意識の高まりが、加入者増の背景にあるようだ。
教職員賠償共済・保険は「生徒間のケンカの対応が不適切だと保護者から損害賠償を求められた」など、教職員が業務中のトラブルで訴えられた際の弁護士費用や賠償金を補償。
「プールの栓を閉め忘れ、自治体から水道料金の一部支払いを求められた」「校外学習のため給食を止めるべきだったのに失念した」など、訴訟に至らないケースの補償もカバーする。
全日本教職員組合共済会が2002年度から月150円の掛け金で始めた「教職員賠償責任共済」は、初年度の加入者4827人から14年度は3・8倍増の1万8479人に。
「大きく宣伝していないのに伸びている」と今谷賢二専務理事は言う。
「個人の責任を追及されるかもしれないという漠然とした不安が現場に広がっている」
教職員共済生活協同組合は11年度に参入。
死亡保障などを備えた総合共済に賠償保険を盛り込んだ。
掛け金は月100円増えたが、毎年4千〜5千人台だった新規加入者は7千人台に増え、14年度は8500人を超えた。
総合企画部の小林康之部長は「教育現場のニーズに驚いている。
危機感は想像以上だ」と話す。」
国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。
この責任は、国等が公務員自身代わって責任を負うものとされており、例えば、最高裁昭和30年4月19日判決は、「公権力の行使に当る公務員の職務行為に基く損害については、国または公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当つた公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」と判示しています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57438&hanreiKbn=02
ですので、国公立の学校の場合、業務中のトラブルで、教職員個人に対する請求が認められることは、およそ考えられません。
とは言え、教職員個人を訴えるのは自由なので、弁護士費用の負担を考えて、保険に加入する意味が、全くない訳ではありません。
しかも、国家賠償法1条2項は、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と定めており、求償される可能性もありますし。
一方、民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定めていますが、国家賠償法1条との文言の違いなどから、こちらの責任は、使用者が被用者に代わって責任を負うという訳ではなく、被用者個人の不法行為責任も、当然に認められるものとされています。
ですので、むしろ、私立の学校の教職員の方々にとって、より保険に加入する必要性が高いとは思います。
とはいえ、実際のニーズは、どうなんでしょうかね。
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