以下は、産経ニュース(2015.7.9)からの引用です。
「北海道小樽市で昨年7月、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、自動車運転処罰法違反の罪などに問われた札幌市西区の元飲食店従業員で無職、海津雅英被告(32)の裁判員裁判が9日開かれ、札幌地裁は求刑通り懲役22年の判決を言い渡した。
判決は飲酒の影響による脇見運転が事故原因と認定。
佐伯恒治裁判長は「被告は時速50〜60キロで車を走行させながら、15秒から20秒程度、スマートフォンを見るため下を向いていた。『よそ見』というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ」と指摘し、被告に自動車運転処罰法違反のうち、危険運転致死傷を適用した。
判決によると、海津被告は平成26年7月13日夕方、酒の影響で前方注視が困難な状態でRVを運転。市道を歩いていた岩見沢市の会社員、原野沙耶佳さん=当時(29)=ら3人をはねて死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。」
危険運転致死罪の成立を争ったので、反省の色がないということで、求刑どおりの満額判決ということでしょうか。
しかし、この事件、検察庁も、当初は、危険運転致死罪の適用を見送っていたのですよね。
ということで、以下は、同じく産経ニュース(2014.9.24)からの引用です。
「危険運転致死の適用を」 遺族らが最高検に上申書 北海道・小樽の3人死亡ひき逃げ
「北海道小樽市で3人が死亡するなどした飲酒ひき逃げ事件で、遺族らでつくる「7・13小樽飲酒ひき逃げ事件被害者等連絡会」は24日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪で起訴された札幌市の男について、同法違反(危険運転致死傷)罪への訴因変更を求める上申書を最高検に提出した。
起訴状などによると、男は7月13日午後、酒を飲んで車を運転、女性4人をはね、救護することなく逃げたとされる。
札幌地検は8月、「事故後に近くのコンビニまで正常に運転しており、アルコールの影響で事故を起こしたとの認定は困難」とし、危険運転致死傷罪の適用を見送っていた。
同会の前田敏章・北海道交通事故被害者の会代表(65)は「札幌地検の判断では、飲酒事故を起こしても『正常な運転ができた』と示すための逃走を助長してしまう。刑事司法への不信を招く」と訴えた。
同会は既に札幌地検に訴因変更を求める要望書を提出。
25日には計約6万人分の要望署名を同地検に提出する。」
別に、被告人の肩を持つ訳でも、弁護人の肩を持つ訳でもありませんが、検察庁ですら、当初、「事故後に近くのコンビニまで正常に運転しており、アルコールの影響で事故を起こしたとの認定は困難」と判断して、危険運転致死傷罪の適用を見送っていた訳ですから、弁護人としては、危険運転致死罪の成立を争わないという選択肢は、なかったのではないかと思います。
危険運転致死罪の法定刑は「1年以上の有期(20年以下)懲役」ですので、併合罪過重(1.5倍)すると、最長30年にもなるのに対して、過失運転致死傷罪の法定刑は「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」に過ぎず、併合罪過重しても、最長10年6月と、大きな差がありますので。
さて、控訴するのでしょうか。
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