以下は、毎日新聞(2015年07月02日)からの引用です。
「大手検索サイト「グーグル」を使ったインターネット検索で、約3年前の逮捕報道が表示され続けるのは人格権の侵害だとして、罰金の略式命令が確定した男性が米グーグルに検索結果の削除を求めた仮処分で、さいたま地裁(小林久起裁判長)が削除を命じる決定を出していたことが分かった。
ネット関連訴訟に詳しい弁護士によると、逮捕報道自体の検索結果の削除を認める判断は異例という。
6月25日付の決定によると、男性は18歳未満の女性にわいせつな行為をした児童買春禁止法違反で罰金50万円の略式命令が確定した。
しかし、逮捕から約3年が経過しても、グーグルの検索で自身の名前や住所を入力すると、逮捕を報じる記事が表示されていた。
男性側は「事件を反省して新しい生活を送っており、更生が妨げられている。過去の犯罪情報を実名掲載する公共性は高くなく、違法」と主張。
グーグル側は「性的欲求を満たすため児童を利用した悪質な犯罪。国際的にも批判が大きく、子を持つ親らの関心も高い」と反論していた。
小林裁判長は決定で、検索サイトに表示される逮捕報道について「事件後の時間の経過や歴史的・社会的意義、当事者の影響力などを考慮し、逮捕歴を公表されない利益が上回る場合は、削除が認められる」との基準を示した。
その上で、今回の事件は▽歴史的・社会的な意義はない▽男性は公職の立場にはない▽罪は比較的軽微だった−−などと認定。
事件から3年経過後もネットに表示し続ける公益性は低いとし、「男性が受けた不利益は回復困難で重大。平穏な社会生活が阻害される恐れがある」と述べて削除を命じた。
ただ、検索サイトが国民の「知る権利」を助ける公共的な役割を果たしていることは認めた。」
最高裁判所平成6年2月8日判決↓は、「前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない。なお、このように解しても、著作者の表現の自由を不当に制限するものではない。けだし、表現の自由は、十分に尊重されなければならないものであるが、常に他の基本的人権に優越するものではなく、前科等にかかわる事実を公表することが憲法の保障する表現の自由の範囲内に属するものとして不法行為責任を追求される余地がないものと解することはできないからである。」と判示しています。
上記報道を読む限り、本決定の基本的枠組みも、同様のように思います。
と、これを書いていて思い出しましたが、ヤフーは、インターネット上の過去の個人情報を削除できる「忘れられる権利」を巡り、検索サービスについて議論する有識者会議を設置するとのことでした↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/408902217.html
本年3月30日付で、その報告書と、対応方針が公開されていました↓
http://publicpolicy.yahoo.co.jp/2015/03/3016.html
ヤフーもグーグルの検索エンジンを使っているそうですが、対応には微妙な違いがあるようですね。
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