以下は、朝日新聞デジタル(2015年5月28日)からの引用です。
「客を確保するために性交渉したクラブのママの「枕営業」は、客の妻に対する不法行為となるのか――。
こうした点について、東京地裁が「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と判断し、妻の賠償請求を退ける判決を出していたことがわかった。
判決は昨年4月に出された。
裁判では、東京・銀座のクラブのママである女性が客の会社社長の男性と約7年間、繰り返し性交渉したとして、男性の妻が「精神的苦痛を受けた」と女性に慰謝料400万円を求めた。
判決で始関(しせき)正光裁判官は売春を例に挙げ、売春婦が対価を得て妻のある客と性交渉しても、客の求めに商売として応じたにすぎないと指摘。
「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」とした。
そのうえで、枕営業は「優良顧客を確保するために要求に応じて性交渉をする営業活動」とし、「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」と指摘。
「客が店に通って代金を支払う中から、間接的に枕営業の対価が支払われている」として、枕営業と売春は「対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」とした。
判決によると、男性と女性は2005〜12年、月に1、2回のペースで主に土曜日に、昼食をとった後、ホテルに行って夕方に別れることを繰り返した。
この間、男性は同じ頻度で店に通っていたため、始関裁判官は「典型的な枕営業」と認定し、妻の請求を退けた。
妻は控訴せず、判決が確定した。
妻の代理人の青島克行弁護士によると、裁判で妻側は「不倫だ」と訴え、女性側は性交渉の事実を否定した。
「双方とも主張していない枕営業の論点を裁判官が一方的に持ち出して判決を書いた。訴訟も当事者の意見を聞かず、わずか2回で打ち切られた。依頼者の意向で控訴しなかったが、不当な判決だ」と述べた。
離婚や不倫訴訟に詳しい田村勇人弁護士によると、判例では、女性が相手を妻帯者と知って肉体関係を持てば、2人は共同で妻への賠償責任を負うのが一般的だ。
売春など妻帯者側の責任が重い場合、女性の賠償額は安くなる傾向があるが、基本的に不法行為と判断されるという。
今回の判決は「従来の判断の枠組みと違い、社会通念からも行き過ぎと感じる。
特殊な事情があったのかもしれないが、この判断が定着するとは思えない」と話す。」
「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実」だそうですが、知りませんでした。
この判決は、6月1日発行の判例タイムズ1411号312頁以下に掲載されています↓
http://www.hanta.co.jp/hanta-new.htm
リンク先の内容はそのうち変更され、バックナンバーの方に移ることになるでしょうが↓
http://www.hanta.co.jp/hanta-backnumberfile.htm
届いたので、読んでみたところ、最高裁判所昭和54年3月30日判決↓は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持つた第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によつて生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被つた精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」と判示していますが、この判決の判事事項は、飽くまで、「未成年の子に対する不法行為の成否」であって、上記の部分は、傍論に過ぎず、判例ではないのだそうです。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53272
解説文でも、「少なくとも売春婦の場合については、本判決の上記判示のような理由から、不法行為性は否定されるであろう。」と解説していますが、そんなものなのですかね。
ちなみに、 最高裁判所昭和48年11月15日判決↓は、「民法770条1項1号の不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。」と判示しており、上記のいずれの場合であっても、夫にとって不貞行為にあたることは、異論はないものと思いますが、自信がなくなってきました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52108
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