以下は、朝日新聞デジタル(2015年4月9日)からの引用です。
「小学校の校庭から蹴り出されたサッカーボールが原因で交通事故が起きた。
ボールを蹴った小学生(当時)の両親に賠償責任はあるのか――。
そうした点が争われた裁判の判決が9日、最高裁であり、第一小法廷(山浦善樹裁判長)は「日常的な行為のなかで起きた、予想できない事故については賠償責任はない」との初の判断を示した。
両親に賠償を命じた二審の判決を破棄し、遺族側の請求を退けた。
民法は、子どもが事故を起こした場合、親などが監督責任を怠っていれば代わりに賠償責任を負うと定めている。
これまでの類似の訴訟では、被害者を救済する観点から、ほぼ無条件に親の監督責任が認められてきた。
今回の最高裁の判断は、親の責任を限定するもので、同様の争いに今後影響を与える。
事故は2004年に愛媛県今治市の小学校脇の道路で起きた。
バイクに乗った80代の男性がボールをよけようとして転倒し、足を骨折。
認知症の症状が出て、約1年半後に肺炎で死亡した。
遺族が07年、約5千万円の損害賠償を求めて提訴。
二審は、ボールを蹴った当時小学生だった男性の過失を認め、「子どもを指導する義務があった」として両親に計約1100万円の賠償を命じた。
両親が上告していた。」
早速、裁判所のホームページに掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85032
民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と定める一方で、民法714条で、「前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定めています。
すなわち、被害者保護の観点から、過失の立証責任を転換している訳ですが、従前は、同じく被害者保護の観点から、「監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」であったと認定することがまずなかったのを、そのハードルを引き下げたことになります。
ちなみに、本人が中学生以上であれば、本人に責任が認められ、両親の責任は原則として認められない訳ですが↓、本件の場合、本人の責任も、両親の責任も、いずれも認められないということになります。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/366746962.html
自宅の火災保険や、車の任意保険の特約として、第三者に怪我をさせてしまった場合などの損害を賠償する個人賠償責任保険に加入されている方も少なくないと思うのですが、保険は、飽くまで、法律的に賠償責任を負う場合にのみ、これを補償するものなので、本件の場合、仮に保険に加入していても、全く補償されないということになります。
2004年の事故ですから、今更、学校側の営造物責任↓を問う訳には行きませんし。
http://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E8%B3%A0%E5%84%9F%E6%B3%95%E7%AC%AC2%E6%9D%A1
保険に加入しているか否かで、異なる判断をする訳にも行きませんので、悩ましいところです。
保険会社は、契約者である親が、「私の日頃のしつけが悪かった」と言えば、保険を適用してくれるのでしょうか。
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