以下は、朝日新聞デジタル(2015年3月7日)からの引用です。
「民事訴訟の代理人を務めた弁護士が、匿名で判決を批判する記事を書き、他人の意見であるかのようにして控訴を申し立てる書類で引用した――。
そんな行為があったとして、日本弁護士連合会が、国内最大手の弁護士事務所に所属する弁護士3人を戒告の懲戒処分にした。
「フェアな姿勢が期待される弁護士として品位を失う行為だ」と批判した。
一方、3人は「弁護士活動への過度な規制だ」として処分の取り消しを求めている。
処分を受けたのは「西村あさひ法律事務所」(主事務所・東京)に所属する3人の男性弁護士。
このうち1人は50代で、国内外の大学で講師や客員教授を務め、企業の社外監査役もしている。
別の1人は40代で裁判官出身。
もう1人は30代。
日弁連が公表した処分理由などによると、3人の弁護士は、株の誤発注をめぐる損害賠償訴訟の原告側の代理人を務めた。
東京地裁は2009年12月、請求の一部を認める判決を出したが、原告側は不服として控訴。
3人は四つの法律雑誌に判決の論評を載せるよう働きかけ、批判的な記事を書いた。
記事は、匿名や「編集部」の名義で掲載された。
その後、弁護士らは裁判所に出す控訴状に記事を引用。
「すでに公刊物でも指摘されているが、一審判決は様々な矛盾点や疑問点を内包している」とした。
この引用を知った被告の会社側が第一東京弁護士会に懲戒を請求。
同会は13年12月、悪質性は低いとして請求を退けた。
だが、異議の申し立てを受けた日弁連が昨年11月、「組織性・計画性も否定できない。第三者などを装い、批判記事を掲載した。裁判官を誤解させる行為だ」と判断し、3人を戒告とした。
3人は今年1月、この処分の取り消しを求め、東京高裁に提訴した。
弁護士法の規定で高裁が一審となる。
この訴訟の代理人弁護士は朝日新聞の取材に「組織性・計画性を認定した点や、匿名などでの掲載まで弁護士側の働きかけによるものとした点などは事実誤認で、証拠に基づかない認定だ。処分は取り消されるべきだ」としている。
また、同事務所は「日弁連の判断を真摯(しんし)に受け止め、職務の品位に関する規定を明文化するなど意識向上を図っている」とした。
早稲田大学大学院法務研究科の石田京子准教授(法曹倫理)は「弁護士は依頼者のために全力を尽くすのが大前提だが、何をしてもよいわけではない。真実を尊重する義務があり、職務には公共性もある。倫理的に問題のあるケースだ」としている。」
組織性・計画性を認定した点や、匿名などでの掲載まで弁護士側の働きかけによるものとした点が事実誤認だとしても、自分達が書いた記事を、まるで第三者が書いたかのように装い、控訴状に記事を引用して、「すでに公刊物でも指摘されているが、一審判決は様々な矛盾点や疑問点を内包している」と主張したこと自体は、間違いないのですよね。
にもかかわらず、「弁護士活動への過度な規制だ」として処分の取り消しを求め、このような記事になってしまうことの方が、もの凄いマイナスなのではないでしょうか。
我々弁護士には毎月送られて来る(とは言っても会費の中に購読料が含まれている)日弁連発行の「自由と正義」の1月号には、本件の懲戒処分の公告が掲載されていましたが、だからと言って、マスコミが、大々的に記事にしていた訳ではないですよね。
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