以下は、47NEWS(2015/02/18)からの引用です。
「青酸化合物を使った京都、大阪の連続殺人事件で、殺人容疑で再逮捕された京都府の筧千佐子容疑者(68)が、青酸が検出された2人以外にも、知り合いだった男性数人の死亡に関与したとほのめかす供述をしたことが18日、捜査関係者への取材で分かった。
一方、供述に具体性はなく、信用できる内容かどうかははっきりしないとされる。
死亡当時に事件性が疑われたケースは少なく、再捜査は難航するとみられる。
捜査当局は立件の可否を慎重に検討する。
2013年12月に死亡した千佐子容疑者の夫勇夫さんと、12年3月に死亡した大阪府の本田正徳さんの遺体からは青酸の成分が検出されている。」
この事件↓の続報ですが、支払能力の問題だけでなく、刑に処せられるかどうかという問題がありましたね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/413435531.html
憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と定めており、これを受けた刑事訴訟法319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と定めていますので、本人が容疑を認めただけでは、有罪にはできません。
自白獲得のために拷問が行われたり、自白のみに偏した裁判が行われた過去の歴史への反省から、定められたもので、補強法則と言います。
死亡当時は事件性が疑われなかったので、遺体や血液は残っていないでしょうし、昔のことなので、今更、秘密の暴露というのも、なかなか見つからないでしょうから、立件は難しいでしょうね。
立件できない以上、「刑に処せられた者」にはなり得ないので、相続人らは、筧千佐子容疑者に対して、遺産の返還を求めることはできないことになります。
ただ、夫に掛けていた生命保険の死亡保険金を、筧千佐子容疑者が受け取っていたとしたら、こちらは、どうなるのでしょうかね。
同容疑者が死亡保険金を受け取れないのは、民法による効果ではなく、約款による効果ですから、別に「刑に処せらた」ことは必要なく、保険会社は、同容疑者に、支払った保険金の返還を求めることができるのではないかと思います。
受取人が同容疑者になっていれば、それだけの話でしょうが、受取人が法定相続人になっていたとしたら、どうなるのでしょうか。
上記のとおり、同容疑者が相続欠格事由に該当するためには、やはり「刑に処せらた」ことが必要なので、法定相続人は同容疑者であることには変わりはなく、後順位の親族は、やはり請求できなさそうです。
殺された夫自身の同容疑者に対する損害賠償請求権を相続するのも、やはり相続欠格事由に該当しない同容疑者ということになるので(混同により消滅)、後順位の親族は、やはり請求できないという結論になりそうです。
そうなると、遺族固有の慰謝料を請求できるかどうかが関の山、ということになりますね。
「刑に処せられた者」という要件は、殺害したことを明らかにするため、ということのようですが、殺害よりも明らかに軽い他の欠格事由には、このような要件がないことと比較して、著しく不均衡ではないかと思います。
民法が改正されるそうですので、この際、この要件は削除すべきではないでしょうか。
法曹関係者にしか、わからないような話で、すみません。
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