以下は、朝日新聞デジタル(2015年2月7日)からの引用です。
「滋賀県愛荘(あいしょう)町の町立中学校で2009年、柔道部の部活動中に中学1年の男子生徒(当時12)が死亡した事故をめぐり、生徒の母親が当時顧問だった男性に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は5日付の決定で、母親の上告を退けた。
この訴訟では、一審の大津地裁が元顧問の過失を認め、愛荘町に約3700万円の支払いを命じる一方、元顧問個人への請求は「公務員個人は責任を負わない」として退ける判決を出した。
これに対し、母親が元顧問だけを相手に訴訟を続けていた。
昨年1月の大阪高裁判決は、一審に続き元顧問の過失は認めたが、賠償責任は認めなかった。
最高裁も二審の判断を支持した。
二審判決によると、男子生徒は09年7月、元顧問に返し技を掛けられて倒れ、約1カ月後に急性硬膜下血腫で死亡した。」
最高裁判所昭和30年4月19日判決↓は「公権力の行使に当る公務員の職務行為に基く損害については、国または公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当った公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」と判示しています。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57438
判決文には何も理由が書かれていませんが、一般的には、国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、『国又は公共団体が、』これを賠償する責に任ずる。」と定めており、文言上、飽くまでも国又は公共団体が責任を負うのであって、公務員個人が責任を負うものではないと読むのが自然であること、同条2項が「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と定めていることと整合すること、その背景事情としては、公務員個人に賠償金を支払うだけの資力がなければ、被害を受けた私人は賠償金を得ることができなくなるので、行政が賠償責任を負うこととしたものであり、公務員個人が賠償責任を負わされたのでは、公権力の行使が消極的になってしまい、それは公共の福祉のために決しての望ましいことではないから、などと説明されています。
元顧問を提訴、控訴、上告した弁護士も、勿論、この最高裁判決の存在を知らない訳はないと思いますが、最高裁判決の変更を狙ったということなのでしょうか。
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