以下は、毎日新聞(2015年1月30日)からの引用です。
「青酸化合物による連続殺人事件で、大阪の交際男性に対する殺人容疑で再逮捕された筧(かけひ)千佐子容疑者(68)が事件直後、男性の遺産の譲渡を約束した「公正証書遺言」の存在を男性の兄弟ら親族に知らせ、「財産はすべて自分の物」などと話していたことが捜査関係者への取材で分かった。
男性は両親を亡くし、子供もいないため、この公正証書がなければ兄弟に遺産相続権が発生する。
大阪府警は千佐子容疑者が殺害後に全遺産を受け取るため、公正証書を作ったとみて調べている。
捜査関係者によると、千佐子容疑者と交際中だった本田正徳(まさのり)さん(当時71歳)は2012年3月9日、大阪府泉佐野市内でバイクを運転中に転倒し、病院で亡くなった。
この約2カ月前、府内の公証役場で死亡時の全遺産を千佐子容疑者に遺贈する公正証書が作られた。
千佐子容疑者は本田さんの通夜の席で、兄弟らに「友達に弁護士が2人いて公正証書がある」と説明した。
「一緒に暮らしていないのに遺産を全部受け取るのはおかしい」と詰め寄られると、「みんなにも分ける。私がそんな女に見えるか」と言い返したという。
千佐子容疑者はこの頃、親族に公正証書を見せ、本田さんの全財産を自身が受け取る権利があると強調した。
遺産約2000万円は全て千佐子容疑者が受け取った。
千佐子容疑者は昨年11月に京都府警に逮捕される前の毎日新聞の取材に「兄弟には遺産の半分を渡した。公明正大だ」と説明した。
府警は30日、千佐子容疑者を大阪地検堺支部に送検した。」
まだ刑事裁判は始っていませんが、他の報道によると、カプセルで青酸を飲ませたというような供述も始めているとのことで、仮に全ての事件で殺人事件で有罪となれば、結婚していた男性から相続する権利も、交際相手から遺贈を受ける権利も、なかったことになります。
民法891条1号は、「故意に被相続人…を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」は、相続人となることができない旨を定めており、同法965条は、この規定を、受遺者についても準用しているからです。
ですので、有罪となれば、他の相続人らとしては、彼女に対して、不当利得なり不法行為なりに基づき、本来自らが受け取るべきだった遺産を取り返すことができる訳ですが、一番の問題は、支払能力です。
公平に分配するためには、破産手続ということになるのでしょうが、破産申立をする暇があったら、我先に、判決を取って、強制執行をして、回収しようとするのでしょうかね。
振り込め詐欺救済のための「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」だけでなく、様々な犯罪で、簡易・迅速・公平な救済手続が必要ではないでしょうか。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO133.html
この法律により、口座を凍結されるようになってからは、直接授受したり、ゆうパックで送らせたりというのが、主流になっているようですが、何か手当てはありましたでしょうか。
このブログの筆者のホームページはこちら