以下は、朝日新聞デジタル(2015年1月14日)からの引用です。
「夜明け前の東京・歌舞伎町の雑居ビルで、トイレに入った女性が消えた。見つかったのは約30メートル下の屋外。トイレには出入り口とは別にもう一つの「扉」があった。何が起きたのか。
扉の外、足場なく転落死か 歌舞伎町のビル9階のトイレ
東京都新宿区歌舞伎町1丁目の雑居ビル7〜9階に入居する飲食店。新宿署によると、昨年12月12日、世田谷区のアルバイト女性(22)は午前1時ごろに友人7、8人で来店し、飲食を楽しんでいた。
「お手洗いに行く」。女性は午前4時半ごろ席を立ち、9階の女子トイレへ。しばらくしても戻ってこない。女性は酔っていたといい、心配した友人が見に行くと、個室に鍵がかかっていた。ノックしても応答はなく、こじ開けて中に入ると、女性の姿はなかった。
ただ個室には別の扉があり、その鍵は開いていた。扉の先はいきなり外で、足場はない。午前5時ごろ、店員が「人が落ちたかもしれない」と110番通報。女性は隣接するビルとの隙間の地上に倒れているのを新宿署員に発見され、搬送先の病院で亡くなった。
署によると、扉は金属製で縦約150センチ、幅約85センチ。扉にはサムターンの錠が付いているが、中から解錠できる。便座から見ると、右が洗面所への出入り口、左が問題の扉。約35センチの段差があり、床から約80センチの位置に転落防止の横棒が1本添えられている。
自殺は考えにくいといい、個室は施錠されていたため他人が介在した可能性は低い。署は女性が個室を出ようとして誤って問題の扉を開け、バランスを崩して転落したとみている。
そもそも、この扉は何のためにあるのか。
新宿区に提出されたビルの概要書によると、ビルは9階建てで、2002年に完成。外から見ると、3階以上の各階の同じ場所に同様の扉がある。いずれも屋外に足場はない。隣のビルとの隙間は1メートルほどしかなく、荷物を搬入するために設けたとも考えにくい。
ビルの所有会社は取材に「換気用として設けた。窓では十分な換気量を確保できないため、(全面が開く)扉の形状にした」と説明した。設計した建築事務所は「担当した建築士が退社しており、なぜこうした構造になったのかわからない」という。
記者が別の階のテナントに確認すると、扉のある位置の内側は壁で覆われ、扉は開かないようになっていた。女性がいた飲食店でも扉の位置にトイレがあるのは9階だけ。所有会社は「換気の機械を設ければ、扉をふさいでも問題はない」との立場だ。「あとは入居するテナントの判断」という。所有会社は事故前、9階トイレの存在を知らなかったといい、借り主側が入居後に設置した可能性が高い。現在の店の運営会社に複数回取材を申し入れたが、「取材は断っている」との回答だった。
商業ビルなどの設計を手がける都内の1級建築士は「一般的に、天井のファンなどで建築基準法が定める換気の基準を満たす。こんな危険な扉は通常ありえない」と「換気用」との説明に疑問を投げかける。「解錠できないよう鍵にカバーをつけるなど、事故を防ぐ対策を講じるべきだった」
扉が消防関係の法令に違反していた可能性はないか。東京消防庁は事故後、現場のトイレの立ち入り調査をしたが、問題の扉は消防活動に関するものではないため、その是非については答えられないという。
事故後、個室には「故障中」の紙が貼られ、使用中止になっている。署と区は、安全管理に問題はなかったか、ビルの所有会社や店側から事情を聴く。」
消防法は関係なくても、刑事的には、業務上過失致死罪(刑法211条)に該当する可能性が充分ありますね。
民事的にも、本来有しているべき安全性を欠いており、テナントないしは所有者の土地工作物責任(民法717条)が発生するでしょうね。
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