以下は、朝日新聞デジタル(2015年1月7日)からの引用です。
「認知症などで判断力が衰えた高齢者らの財産を守るために約3年前に導入された制度を利用し、信託銀行に預けられたお金が急増している。昨年9月末で計約786億円にのぼる。親族らの不正な引き出し防止に有効として最高裁が勧めるが、高齢者ら本人のために財産が使われなくなるとの懸念もある。
この制度は「後見制度支援信託」で、2012年2月に導入された。判断力が十分でない人の財産を管理したり、代わりに契約をしたりするには、「成年後見制度」がある。だが、後見人の親族らがお金を着服する事件が増加し、最高裁家庭局と、信託銀行でつくる信託協会が不正防止のために考案した。後見人を選任する際に、信託制度を利用するかどうかを家裁が決める。選任後に利用を決めることもある。
最高裁の調査では、親族らが勝手にお金を引き出した総額は11年は計約33億4千万円、12年が計約48億1千万円、13年が計約44億9千万円だった。成年後見制度を利用する人が年々増え、家裁の職員のチェックが行き届かなくなっているとの指摘もある。
「支援信託」では、本人の日常生活に使われるお金は後見人が定期的に受け取り、それ以外は信託銀行に預ける仕組みだ。まとまったお金が必要な場合は、後見人が家裁の許可を得て銀行から引き出す。その際、家裁から理由を書いた報告書の提出が求められる。
最高裁によると、12年末時点の利用件数は98件で計約42億円、13年末では631件で計約239億円だった。14年は9月末で2085件、計約786億円に急増している。最高裁が「財産を適切に保護する方法」として利用を促しており、今後も増える見通しだ。
一方、日本弁護士連合会は制度の導入について「本人の財産が凍結されるため、本人のために財産を活用することをめざす成年後見制度の理念に反する」と指摘するなど、慎重な姿勢を崩していない。日弁連高齢者・障害者の権利に関する委員会の青木佳史弁護士は「不正行為をしている後見人は一握り。大半の親族後見人は適切に財産管理をしているのに、財産が信託銀行で管理されれば、自然と使いにくくなり、結果として本人のためにならないことがある」と話す。
■家裁と行政、連携が必要
成年後見制度に詳しい上山泰・新潟大法学部教授の話 成年後見の利用者が年々増え、後見人を監督する家裁の業務量はもはや限界に達している。後を絶たない親族後見人の不正行為を防ぐため、支援信託の利用を促そうとする最高裁の立場も理解できる。ただ、支援信託は財産を保全する目的に偏向しすぎており、本人の自己決定を尊重するという成年後見制度の理念に反するおそれがある。後見人の選任や監督を家裁が一手に引き受けるのではなく、市役所など地域の行政機関と連携した新たな形の模索を急ぐべきだ。
◆キーワード
<成年後見制度>
明治時代から続いた「禁治産」制度に代わる形で、2000年に導入された。病気や障害などで判断能力が低下した人に代わり、後見人が財産管理や契約などを担う制度。
後見人は本人や親族、市区町村の申し立てを受けて家裁が選ぶ。弁護士や司法書士、社会福祉士が選ばれることも多い。本人の判断能力の程度に応じて「後見人」のほか、「保佐人」「補助人」が選ばれる。最高裁によると、13年末時点で全国の利用者は約17万7千人。」
裁判所が、後見制度支援信託制度の利用を推し進めたいのは、当然のことでしょうね↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/409187581.html
しかし、日弁連は反対しており、この意見書↓だけでなく、「後見制度支援信託」でサイト内検索をすると、色々と出てきます。http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/110327_4.html
私自身が成年後見人に選任され、数千万あるいは億単位の預貯金を管理しているケースが何件もあり、「自分で管理するよりも安心・安全だから、別に良いんじゃないの。ご本人のために必要な支出なのであれば、裁判所にそれを理解させるのが、我々弁護士の仕事でしょ。」と思っていましたが、後見制度支援信託制度を利用すると、我々、専門職後見人はお役御免となり、その後は、親族後見人だけということになるようですね。
それでは、色々な意味で、賛成しづらいですね。
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