以下は、毎日新聞(2014年11月04日)からの引用です。
「事件や紛争の被害回復や賠償のための差し押さえであっても、守秘義務を盾に顧客の口座情報の開示を拒んできた大手金融機関が、弁護士会照会による開示の求めに応じ始めた。
合理性があれば顧客に対する金融機関側の賠償責任はないとする司法判断などが後押ししているとみられる。
大手が方針転換したことで、他の金融機関にも広がる可能性がある。
三井住友銀行は今年3月、口座情報の開示に関する全国初の協定を大阪弁護士会と結んだ。
開示について銀行側が顧客から訴えられた場合、訴訟を弁護士会が支援する仕組みを作ったのが特徴だ。
この協定に基づき、判決が確定したり和解したりした場合、弁護士会からの照会に応じている。
弁護士会によると、交通事故の加害者が被害者側への支払いを命じた判決を無視したが、三井住友銀の口座が見つかって賠償金を差し押さえるなど、協定の成果が出ているという。
他の弁護士会とも同様の協定を結ぶ方向で調整している。
また、こうした協定は結んでいないものの、ゆうちょ銀行は2012年、三菱東京UFJ銀行も13年から、確定判決や和解成立を条件に照会に回答する方針に転じているという。
事件や紛争の被害者が勝訴しても、相手側が賠償金や和解金を払わないケースは少なくない。
ただ、弁護士会照会への回答拒否に罰則はなく、金融機関などは「プライバシーの侵害で顧客への賠償責任を負うリスクがある」と開示に消極的だった。
銀行関係者によると、姿勢の変化をもたらした要因に裁判所の判断もある。
口座情報を開示された顧客が銀行を訴えた裁判で広島高裁岡山支部判決は00年、「必要性と合理性があれば顧客への不法行為責任を免れる」とした。
12年には金融機関の開示義務を認めた地裁レベルの判決も出た。
三井住友銀は「守秘義務が免責されるか分からず開示しなかったが、守秘義務違反に問われる可能性は低いと判断した」としている。
ただ、みずほ銀行など多くの金融機関は依然として「守秘義務があり、顧客の同意がなければ回答しない」との立場を維持する。
日本弁護士連合会の佐藤三郎・弁護士会照会制度委員長は「他銀行に広がることを期待したい」と話している。
◇弁護士会照会
証拠収集や紛争解決のために、弁護士が行政機関や企業に必要な情報の提供を求める制度。
弁護士法23条の規定で弁護士会を通じ照会する。
照会された側の回答義務は法に明記されておらず、拒否した場合の罰則規定もない。」
従前は、弁護士法23条照会に応じれば、顧客から損害賠償請求をされる可能性がある一方、応じなくても、弁護士側からは特段の反応がなかったことから、金融機関は、ひたすら開示を拒んで来ました。
当然と言えば、当然のことです。
そこで、照会に応じて貰えなかった弁護士側が、積極的に損害賠償の訴えを提起することにより、開示を拒んでも、損害賠償請求される可能性がある、という状況となりました。
そうなると、金融機関としても、真剣に考えざるを得なくなり、そこに、地裁レベルではありますが、判決の後押しと、弁護士会の支援によって、ようやく、一歩前進ということです。
保釈の問題もそうですが、ぶつぶつ文句を言っているだけでは何も変わらない、行動しなければならない、ということですね。
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