以下は、YOMIURI ONLINE(2014年10月25日)からの引用です。
「交通事故の損害賠償請求訴訟が全国の簡易裁判所で急増し、昨年の提訴件数は10年前の5倍の1万5428件に上ったことが、最高裁の調査でわかった。
任意の自動車保険に弁護士保険を付ける特約が普及し、被害額の少ない物損事故でも弁護士を依頼して訴訟で争うケースが増えたことが原因。
弁護士が報酬額を引き上げるために審理を長引かせているとの指摘も出ており、日本弁護士連合会は実態把握に乗り出した。
弁護士保険は2000年、日弁連と損害保険各社が協力して商品化した。
事故の当事者が示談や訴訟の対応を弁護士に依頼した場合、その費用が300万円程度まで保険金で賄われる。
契約数は12年度で約1978万件。
重大事故で保険加入者を保護する目的で導入された側面があるが、被害が軽微な物損事故で使われているのが実態だ。」
2年余り前の報道では、弁護士保険の利用はごく僅かとのことで↓、むしろ驚きでした。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/273681527.html
ところが、1年余り前の報道では、高額報酬請求トラブル相次ぐということでしたし↓、更に、今回のこの報道ですから、ここ1〜2年で、利用数が急増しているということなのですかね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/365528183.html
「重大事故で保険加入者を保護する目的で導入された側面がある」とのことですが、人身事故であれば、さほどの重大事故ではなくても、弁護士保険がなくても、弁護士に依頼をした方が、結果的に得をするのが普通です↓
http://morikoshi-law.com/koutuujiko.html
ですから、弁護士費用保険ができたことによって、昔であれば、「費用倒れになるから」ということで、泣き寝入りするしかなかったような軽微な物損事故の被害者の利用が増えるのは、当然の成り行きではないかと思います。
保険会社の担当者レベルでも、昔は過失割合について粘り強く交渉・説得していた物損事故(損害額が争いとなることは余りありません)を、さっさと、弁護士費用保険を使って、弁護士に回してくるようになったように思います。
「弁護士が報酬額を引き上げるために審理を長引かせている」ということは、タイムチャージ方式で報酬を請求しているということなのですかね。
弁護士になって20年、タイムチャージ方式などという面倒臭いことは、一度もしたことがありませんが、今時の弁護士は、マメなのですね。
タイムチャージ方式の報酬を青天井にしているせいで、訳のわからない請求があり得てしまうのですから、着手金・報酬方式と同様に、上限を設ければ良いだけの話ではないでしょうか。
インターネット上では見つかりませんでしたが、読売新聞には、同じ日の記事で、「近年、簡裁事件の控訴率が上昇しているが、急におかしな判決が増える訳がないので、過払事件が減って、食い扶持がなくなった弁護士が、依頼者に控訴を勧めているのではないか」というようなことも書いてありました。
過払事件が減ったのはその通りでしょうが、対アイフル以外は殆ど和解で解決していた過払事件が激減したことによって、相対的に、判決に至る事件が増え、結果的に控訴率が上昇しただけの話ではないかと思いますし、「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」によれば、着手金・報酬方式の場合、控訴した場合にも着手金は発生するものの、1審の着手金の1/4が上限と、微々たるもので、それを動機に控訴を勧めるような金額ではないと思うのですが。
弁護士保険は、不幸にして、交通事故の被害者となったご本人にとっては勿論、我々弁護士にとっても、ありがたい制度です。
ということは、弁護士に報酬を支払うだけでなく、被害者に損害を賠償しなければならない立場にもある損害保険会社にとっては、ありがたくない制度ということになりますので、何かにつけて、制度を廃止しようとする圧力がかかることになるのは、容易に想像できます。
せっかく根付いてきたところなのに、ごく一部の弁護士のトラブルによって、販売中止などということにならないように、訳のわからないことはしないで欲しいものですし、日弁連も、しっかりと対応して欲しいものです。
このブログの筆者のホームページはこちら