以下は、朝日新聞デジタル(2014年10月10日)からの引用です。
「インターネット検索最大手「グーグル」で自分の名前を検索すると、犯罪に関わっているかのような検索結果が出てくるのはプライバシー侵害だとして、日本人男性がグーグルの米国本社に検索結果の削除を求めていた仮処分申請で、東京地裁は9日、検索結果の一部の削除を命じる決定を出した。
専門家からは「検索サイトに、検索結果の削除を求める司法判断は国内で初めてではないか」との指摘が出ている。
■EUでは5月に削除命じる判決
関述之裁判官は9日、男性の訴えを認め、男性が求めた237件のうち、著しい損害を与えるおそれがある約半数の122件について、検索結果それぞれの「表題」とその下に表示される「内容の抜粋」の削除を命じる決定を出した。
新潟大の鈴木正朝教授(情報法)は「これまで、検索サイトに対して、検索の補助機能(サジェスト機能)の表示差し止めを命じる判決はあったが、検索結果の削除を求めた国内の判断はこれまで聞いたことがない」と話している。
男性は今年6月、犯罪を連想させる検索結果が出ることで、「現在の生活が脅かされる」として、削除を求める仮処分を申し立てた。
9日の決定で、東京地裁は、男性の人格権が侵害される内容が表示されていることが認められるとして、「(検索)サイトを管理するグーグル側に削除義務が発生するのは当然だ」と指摘。
グーグル側の「検索サービスの提供者には検索結果の削除義務は原則として認められない」とする主張を退けた。
男性の代理人の神田知宏弁護士は「ネット上で、プライバシー侵害を受け、心身ともに傷ついている多くの人にとって今回の決定は大きな朗報だ」と話した。
ネット上の投稿や記事について、そこにつながる結果を表示する検索サイト側に責任があるかどうかは長年議論になっている。
今年5月、欧州連合(EU)司法裁判所は、スペインの男性が起こした裁判で、グーグルの責任を認め、不適切な個人情報の検索結果を削除するよう命じる判決を出した。
「忘れられる権利」が認められたとして、世界的な注目を集めていた。
今回の東京地裁の判断は、こうした流れに続くものだ。
グーグルは削除命令に応じずに、仮処分決定に異議を申し立てることもできる。
グーグル日本法人広報部は取材に、「現時点では、(仮処分が)発令されたという事実は確認していない」とコメントした。
グーグルをめぐっては、名前を検索した際の「サジェスト機能」と呼ばれる予測表示機能のせいで、名誉を傷つけられたとして日本人男性が表示中止を求めた訴訟で、東京地裁が2013年に表示を差し止める判決を出した例がある。
ただ、14年の控訴審判決では男性側は逆転敗訴した。
■〈解説〉削除ルール作り、「日本も検討を」
ネットの普及とともに重要性を増す検索エンジンと、検索結果がもたらすプライバシー問題。
そのバランスをどう取ればいいのかはこれまでも議論になってきた。
今回の決定について、東京大の生貝直人特任講師(情報法)は、「ネット上で公表することと、削除することの双方の利益をきちんと比較している。EUなど、国際的な水準に比べても妥当な判断だ」と評価する。
新潟大の鈴木正朝教授(情報法)も「グーグルがサイト管理者であることを認めた決定で社会的なインパクトは大きい」と話す。
グーグルは日本でも主要検索サイトであるだけでなく、日本の多くの主要ポータルサイトから検索機能を請け負っており、利用者は幅広い。
今回の判断を受け、これまではハードルが高いと思われていた「検索結果の削除」を求める人が増える可能性がある。
ただ、グーグル本社を訴える国際的な裁判は多額の費用がかかり、だれもが起こせるわけではない。
欧州では、5月にEU司法裁が出したグーグル側の責任を認める判決を受け、各国のデータ保護機関の集まりである「29条作業部会」がグーグル本社と、削除のルール作りを話し合っている。
日本では今年、政府が個人に関するデータ活用の大綱案を発表。
今回の決定がルールづくりに影響を与える可能性もある。
プライバシー問題に詳しい板倉陽一郎弁護士は、「日本でも将来的に、国の第三者機関が、グーグル本社と削除のルール作りを検討するべきだ」と指摘している。」
我が国においてサジェスト機能の差し止めを認めた仮処分・判決は↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/260692842.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/355830891.html
1・2審とも、差し止めを認めなかった判決は↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/379594634.html
EU司法裁判所の「忘れられる権利」の判決は↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/397105856.html
確かに、検索結果の削除を求める司法判断は国内で初めてなのかも知れませんが、どのような判断が出るのかは、訴える側が、どのような判断を求めるかによって、変わって来ます(処分権主義)↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/361731978.html
サジェスト機能の差し止めを認めない裁判官は、検索結果の削除も認めないでしょうが、前者を認める裁判官であれば、後者の判断を求めれば、それも認める可能性が高いように思います。
ところで、グーグルの逆転勝訴は気が付きませんでしたが、まさにグーグルで検索したら、出てきました。
という訳で、以下は、古いですが、MSN産経ニュース(2014.1.15)からの引用です。
東京高裁、「グーグル検索予測」差し止めず逆転判決 「他の利用者に不利益」
「インターネット検索で単語を入力すると、別の語句を予測し、並べて表示する米グーグルの「サジェスト機能」で名誉を傷つけられたとして、日本人の男性が表示差し止めなどを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は15日、表示を禁じた一審東京地裁判決を取り消し、男性側逆転敗訴を言い渡した。
男性側は上告意向。
鈴木健太裁判長は「表示による男性の不利益が、表示を削除することでグーグルや他の利用者が受ける不利益を上回るとはいえない」と述べた。
男性側は「氏名を入力すると、無関係の犯罪行為を連想させる単語が表示される」と提訴。
一審判決は「男性の名誉毀損やプライバシー侵害に当たる違法な投稿記事を閲覧しやすい状況を作り出している」として、差し止めを命じた。
鈴木裁判長は、表示が男性の人格権を侵害することは認めたが「削除は権利侵害の防止を超えて、他の利用者の利益を制約する」と指摘。
「表示それ自体が名誉を傷つけたり、プライバシーを侵害したりするとはいえず、不法行為も成立しない」とした。」
これまた、判決全文を読んだ訳ではありませんが、報道を読む限りでは、「認めるべきではないと思うので、認めませんけど、何か文句ありますか」と言っているようなもので、当然、上告したくなるでしょうね。
このブログの筆者のホームページはこちら