以下は、朝日新聞デジタル(2014年10月9日)からの引用です。
国が「あなたの財産を形成しながら森林を守る」とうたい、1984〜99年に延べ8万6千人から492億円を集めた「緑のオーナー制度」で、出資して元本割れするなどした239人が計約5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日午後、大阪地裁であった。
阪本勝裁判長はリスクについての説明が不足していたと指摘。
国に対し、出資者84人へ計約9100万円を支払うよう命じた。
判決によると、原告は北海道、東京、大阪、愛知、福岡など31都道府県や海外に住む男女。
84年から原則「1口50万円」で国(林野庁)と出資契約を結び、スギやヒノキなどの国有林を共同所有(出資総額約2億5千万円)した。
その後、20〜30年後の木材業者への販売期を迎えたが、木材価格の低迷で元本割れしたり売れなかったりした。
判決は、林野庁が勧誘の際に使ったパンフレットには、93年度の途中まで元本割れのリスクの記載がなかったと指摘。
この時期までに出資を始めた人たちに対し、林野庁の担当者は「元本割れしない」との誤解を取り除くよう説明する義務を怠ったと認定した。
一方で、パンフレットには「収入予想は困難」との記載があったことを踏まえ、出資者には3割〜5割の過失があると判断した。
リスクに関する記載が盛り込まれた後に新規契約した出資者の訴えは棄却。
契約した時から提訴までに20年以上たっていた出資者らについても「損害賠償請求権が消滅した」などとして請求を退けた。」
20〜30年経たないと販売期を迎えない、損害が発生するかどうかわからない、提訴しようがないのに、契約した時から提訴までに20年以上経っていた出資者らについては、「損害賠償請求権が消滅した」として請求を退けられては、とてもじゃないですが、納得できないでしょうね。
民法724条は、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と定めており、この定めは、国家賠償にも適用されます(国家賠償法4条)。
「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」とは別に、わざわざ「不法行為の時から20年を経過したとき」という定めを置いているので、絶対不変の除斥期間と解するのが文理上自然で、最高裁判所平成元年12月21日判決も、そのように判示しています↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52709
しかも、「裁判所は、除斥期間の性質にかんがみ、本件請求権が除斥期間の経過により消滅した旨の主張がなくても、右期間の経過により本件請求権が消滅したものと判断すべきであり、したがって、被上告人ら主張に係る信義則違反又は権利濫用の主張は、主張自体失当であって採用の限りではない。」とまで、判示しています。
主張を要しない以上、信義則違反とか権利濫用という話にはなり得ない、のだそうです。
個人的には、別に、そんなに理屈っぽく割り切らなくても良いのではないかと思いますが(原審の福岡高裁の考え方)、この最高裁判決を前提としても、本件の場合、出資の勧誘時の説明不足だけでなく、木材業者への販売によって損害が発生するまでの一連の行為を、全体として不法行為と捉えるべきなのではないのでしょうか。
30年後に爆発する時限爆弾を仕掛けて、実際に30年後に爆弾が爆発して被害を被ったとしたら、裁判官は、「仕掛けたのは30年前だから、20年の除斥期間は既に経過している」と判断するのでしょうか。
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