以下は、毎日新聞(2014年09月25日)からの引用です。
「母から子への感染を徹底して予防すれば制圧可能と考えられていたB型肝炎をめぐる常識が変わってきた。
大人が感染した場合も慢性肝炎になる恐れが明らかになり、専門家は「ワクチンの接種方式をはじめ、B型肝炎対策を見直す必要がある。
検討を急ぐべきだ」と指摘する。
●1〜2割が慢性化
B型肝炎の原因はB型肝炎ウイルス(HBV)だ。
主な感染経路は血液への接触、出産時の母子感染、性交渉。
この中で肝がんへと進む可能性がある慢性肝炎を減らすには、母子感染予防が最も有効とされてきた。
「免疫が不完全な乳幼児期に感染すると慢性化しやすいと考えられる」(加藤直也・東京大医科学研究所准教授)ためだ。
日本は感染した妊婦から生まれた赤ちゃんへのワクチン接種を1986年から全国で展開。
その成果で20代以下の感染者は激減した。
しかし、予想に反し制圧は遠い。
従来と遺伝子タイプが異なるHBVによる急性肝炎が増加中なのだ。
HBVの遺伝子タイプはA〜Jの10種あり、タイプにより病状などに差がある。
日本に多いCとBは、大人が感染し倦怠(けんたい)感や黄疸(おうだん)など急性肝炎の症状が出ても、多くは自然に回復し慢性化しない特徴があった。
ところが、新たに増えてきたAタイプはもともと欧米に多く、急性肝炎の症状は軽いが「1〜2割が慢性肝炎になるとの報告がある」(加藤さん)。
厚生労働省研究班の全国調査によると、B型の急性肝炎に占めるAタイプの割合は90年代半ばから増え始め、2010年時点では過半数に。
原因のほとんどは性交渉とされる。
「母子感染以外の人の肝がんをどう防ぐかを考えなければならなくなった」と加藤さんは言う。
●ウイルスが「再活性」
もう一つの大きな問題が、HBVの「再活性化」と呼ばれる現象。
従来の検査法で完治と考えられた人たちが、抗がん剤や免疫を抑える治療を受けた後、症状が急激に進む劇症肝炎になり、死亡例も出た。
再活性化に関する厚労省研究班代表の溝上雅史国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長によると、悪性リンパ腫の標準治療で使われる薬「リツキシマブ」を投与された人の8%程度でHBVの再活性化が起き、劇症肝炎につながりやすいことが分かった。
治ったら「肝臓から消える」と考えられていたHBVだが、実は潜んでいて特定の治療を引き金に再び増殖、それを免疫システムが攻撃して重症の肝炎になるのだという。
溝上さんは「感染は一生続くという認識に切り替える必要がある」と話す。
こうした問題を受け「現在のように対象を限定したワクチン接種では不十分」と、見直しを求める声が専門家の間で強くなってきた。
世界保健機関(WHO)は乳児全員へのワクチン接種を推奨し、日本肝臓学会によれば世界180カ国以上が全員接種方式。
厚労省の予防接種部会も12年、B型ワクチンを、接種を受けやすい「定期接種」に加えるべきだと提言した。
溝上さんは「全員接種が望ましいが、新生児だけでも年に100億円以上が必要になる。全員接種方式の費用対効果について総合的な検討を早急に進める必要がある」と話す。」
B型肝炎訴訟においても、「B型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではないこと」が要件となっていますが↓、これは、このタイプのB型肝炎ウィルスは、成人感染の可能性があるためです。 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou/b-kanen/dl/b-kanen_tebiki-zentai.pdf
ジェノタイプAの中にも、サブジェノタイプがあり、eタイプだけが、成人感染の可能性がある訳です↑
但し、平成7年以前に持続感染が判明(初診)した場合には、検査は不要とされていますが↑、これは、我が国で、このタイプのB型肝炎ウィルスの感染が初めて確認できたのが、それ以後だからです。
今のところ、私自身が担当した方で、Aタイプだった方はいませんが、B型の急性肝炎に占めるAタイプの割合が2010年時点で過半数、急性肝炎の症状は軽いが「1〜2割が慢性肝炎になるとの報告がある」とは驚きです。
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