以下は、毎日新聞(2014年09月10日)からの引用です。
「法務省は9日、今年の司法試験合格者を発表した。
2年連続の減少で、前年より239人少ない1810人だった。
2000人を割り込むのは2006年以来。
合格率は現行試験が始まった同年以降最低の22・6%(前年比4・2ポイント減)となった。
一方、「例外ルート」である予備試験通過者の受験は今年3回目だが、合格者は最多となる163人。
合格率も66・8%で、3年連続でどの法科大学院よりも高かった。
今年5月の改正司法試験法成立で受験回数制限が「5年で3回」から「5年で5回」に緩和されて受け控えが減ったとみられ、3年ぶりに受験者数が増加し、8015人(前年比362人増)となった。
一方で政府は02年、合格者数を「10年に3000人程度」とする計画を掲げていたが、実現されないまま昨年7月に事実上撤回。
今回の合格者数が注目されていた。
合格者の最年長は65歳で最年少は22歳、平均年齢は28・2歳。
法科大学院別にみると、合格率トップは京都大の53・1%で、(2)東京大(3)一橋大(4)慶応大(5)大阪大と続いた。
早稲田大の172人をトップとする合格者数の上位10校で全体の6割を占める一方、合格者数1桁は39校あり、愛知学院大、神奈川大、島根大、姫路独協大の4校はゼロだった。
また法科大学院修了者のうち、大学の法学部出身者向けの既修者コース(2年)の合格率が32・8%だったのに対し、法学部出身者以外が中心の未修者コース(3年)は12・1%にとどまり、未修者教育に改めて課題を突きつけた。
予備試験通過者は244人が受験し、163人が合格した。
本来は、経済的事情で法科大学院に通えない人などにも法曹への道を確保するため11年に導入された制度だが、受験資格が設けられていないことから現役の大学生や法科大学院生が受験しているケースも多く、「制度の趣旨に反している」という批判がある。
政府の法曹養成制度改革推進室はこれまで、予備試験について(1)資力のない人や社会人経験のある人に限る(2)一定の年齢以上(3)法科大学院在学者は受験を認めない(4)科目の追加・変更−−という四つの案を検討。しかし法曹志望者減少につながる恐れや、線引きの難しさもあり、「現時点で制限を加えることは難しい」との立場だ。」
法務省のホームページに、合格者の番号だけではなく、法科大学院別の合格者数などの詳しい情報が、既に掲載されています↓
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00099.html
「5年で3回まで」という時代には、法科大学院を卒業しても、「自分はとても合格は覚束ないから、今回受験して、1回減らすのは勿体ない」と考え、受け控えをする人もいましたし、まだ5年を経過していなくても、3回受験して合格できず、それで終わりという人もいたでしょう。
それが「5年で5回」に変更になった訳ですから、受験者数が増加することは当然のことですし、ボーダーラインにも達していない受験者の割合が増加し、合格率が下がるのも当然のことです。
では、合格者数自体が減少したのはなぜかと言えば、目標3000人という増員圧力がなくなったからという訳でも、日弁連や各地の弁護士会の決議や会長声明が功を奏した訳でもないと思います。
昨年7月の撤回後も、なお、合格者は2000人を越えていましたし、合格率も僅かながら上昇していましたので↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/374604258.html
本年4月の自民党の司法制度調査会の提言↓の影響もあるでしょうが、やはり、司法試験を目指す人が少なくなり、受験生の質自体が低下しつつあるのではないかと思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/394373899.html
今回の結果を見ても、上位校と下位校とでは、合格率に大きな差がありますが、ある程度の合格率を維持しており、人気のある法科大学院では、大学院の受験者数、生徒数、そして生徒の質を確保できる一方、そうではない法科大学院では、受験すれば殆ど全員合格という状況のようですので、ますます法科大学院間の格差は加速し、統廃合も加速するのでしょうね。
そして、法科大学院に多大な時間とお金を注ぎ込む必要がなく、早く安く司法試験に合格できる予備試験が人気なのも当然のことですし、法科大学院課程の修了者と「同等」の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する(司法試験法5条1項)という本来の目的よりも、大幅に狭められた狭き門を潜り抜けた予備試験組の合格率が、法科大学院組の合格率よりも大幅に高いのも、当然のことです。
司法試験の合格率が、多大な補助金が注ぎ込まれている法科大学院の助けを借りない予備試験組の足元にも及ばないどころか、殆ど合格者を輩出できない法科大学院が、統廃合されるのは仕方がないことで、それを予備試験のせいにするのは、筋違いだと思います。
札幌弁護士会でも、本年6月18日に、「司法試験予備試験の受験資格制限等に反対する会長声明」を行っています↓
http://satsuben.or.jp/info/statement/2014/06.html
しかも、ごく先日の9月9日、すなわち合格発表当日に、「司法試験合格者を直ちに減員することを求める会長表明」も行ったのですね↓
http://satsuben.or.jp/info/statement/2014/12.html
当然、事前に用意していたのでしょうし、その内容も「このままでは法曹制度そのものを崩壊させかねない」という悲鳴のようなもので、残念ながら、「空手形を信じて司法試験を目指した若者が可哀想」とか、そんなことは言っていられない、待ったなしの状況ということです。
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