以下は、MSN産経ニュース(2014.9.1)からの引用です。
「損害保険各社は、暴力団関係者との取引を全面的に見合わせる反社会的勢力への対策を見直し、自動車保険に限って契約を容認する方針を固めた。
損保関係者が31日、明らかにした。
暴力団組員らが運転する車が交通事故を起こした場合、保険に加入していないと十分な補償ができない恐れがある。
このため、損保は「被害者救済」を優先し、暴力団関係者の疑いがあっても、被害者の賠償に必要な保険の契約には応じる。
9月から順次実施する。
損保関係者によると、自動車保険に限っては、契約申し込みが暴力団関係者かどうか、自社のデータベースと照合して確かめる「事前審査」や、契約後の点検作業を実施しないことにする。
また、交通事故の賠償に必要な保険金支払いの際にも、特別な審査はしないという。
民間の自動車保険の加入率は、共済を含めると8割を超えるとみられ、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と民間保険の両方によって補償される事故が多い。
しかし、損保各社が暴力団関係者との契約を断り続けた場合、事故の被害者は自賠責保険でしか補償を受けられなくなり、「十分な救済ができない」(大手損保幹部)と判断した。
金融庁も例外として、この方針を認める見通し。」
急転直下の方針転換ですが↓、全国47都道府県で施行されている暴力団排除条例(暴力団の排除の推進に関する条例)との整合性は、どうなっているのでしょうかね↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/380788003.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/228571292.html
例えば、北海道暴力団の排除の推進に関する条例↓15条2項は、「事業者は、前項に定めるもののほか、その行う事業に関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、情を知って、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる財産上の利益の供与をしてはならない。ただし、法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行としてする場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。」と定めていますが、「被害者救済」という正当な理由があるからOKということでしょうか。
http://morikoshi-law.com/pdf/bouhai-jyourei_110401.pdf
「「被害者救済」を優先し、暴力団関係者の疑いがあっても、被害者の賠償に必要な保険の契約には応じる」ということからすると、対人・対物保険のみということになりそうですが、「契約申し込みが暴力団関係者かどうか、自社のデータベースと照合して確かめる「事前審査」や、契約後の点検作業を実施しない」「交通事故の賠償に必要な保険金支払いの際にも、特別な審査はしない」ということなので、対人・対物に限られないようにも読めますし、情を知っていても良いというようにも読めます。
刑事弁護はともかくとして、我々弁護士が、暴力団関係者であることを知りながら、彼らの代理人として、例えば、弁護士費用特約を利用して、損害賠償請求を行うことは、「暴力団の運営に資することとなる財産上の利益の供与」になるのでしょうかね。
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