以下は、朝日新聞デジタル(2014年8月4日)からの引用です。
「生命保険に入っていた高齢者が亡くなったことを保険会社が把握せず、遺族らが保険金を受け取っていない事例が多いことが、生命保険大手の調べでわかった。
保険金の受取人がすでに亡くなっていたり、認知症などを患ったりして、請求できないことが増えているためだ。
明治安田生命保険が昨年以降、90歳以上の契約者約1万1千人のほぼ全員を調べたところ、2割弱にあたる約2千人はすでに亡くなっていたが、保険金を払っていなかった。
大半は、保険料の払い込みが終わり、亡くなるまで契約内容が適用される終身保険だ。
総額はわかっていないが、専門家らによると、高齢者の保険金の平均は300万円程度とみられ、2千人分だと計約60億円になる。
第一生命保険も、2年前に91歳以上の契約者に電話調査し、連絡がついた約7割のうち数%の契約者の保険金を払っていなかったことがわかったという。
明治安田と第一は、保険金の支払い漏れがわかった時点で受取人がだれか調べ、すでに大半の支払いを終えたとしている。
最大手の日本生命保険と住友生命保険の2社も年内の調査を検討しており、支払い漏れはさらに増えそうだ。
明治安田の調査で支払い漏れがわかった福岡市の80代の男性は、2007年に亡くなっていた。
保険金の受取人だった妻は、さらにその7年前に他界していた。
夫婦には子どもがなく、保険金は、法律で相続が認められている親族ら(法定相続人)が受け取る。
担当者は戸籍を調べて親類を割り出し、保険金のことを伝えたが、「振り込め詐欺と間違えられ、なかなか信じてもらえなかった」という。
保険会社は、受取人らから請求がなければ保険金を払う義務は生じないが、契約者が亡くなったことがわかれば受取人らに知らせて払うようにしている。
契約者が保険料を払っている間は、支払いが滞るなどして亡くなったことがわかるが、保険料の支払いが終わった高齢者の場合は、転居などで連絡が途絶えていることもある。
請求がなければ、保険会社が契約者の死亡を把握するのは難しく、支払い漏れが起きる可能性が高くなる。
〈終身保険〉
生命保険の一般的な契約の一つ。
保障期間に制限がないため、いくつになっても死亡時に保険金が出る。
保険会社に保険料を月々払い、60〜65歳ごろに払い終わる契約が多い。
保険金の受取人は加入時に決める。
配偶者(妻や夫)や子どもを受取人にする人が大半とみられる。」
これを「支払い漏れ」「未払い」と表現するのは、いかがなものなのでしょうかね。
生命保険の約款には、「保険金を請求する権利は、支払事由が生じた日(=被保険者が死亡したとき)の翌日からその日を含めて3年間請求がない場合には消滅する」旨の定めがあるそうです。
余りに年月が経過すると、自殺等の免責事項の有無を調査することが困難になるおそれもあるでしょうから、それなりに合理性のある定めだと思います。
しかし、実際には、上記のとおり、3年以上前に死亡していたケースでも、保険金を支払っている訳ですから。
もっとも、保険会社も、微妙な案件では、消滅時効を盾に、支払いを拒むこともあるようです。
最高裁判所平成15年12月11日判決は、「生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても、被保険者が自動車を運転して外出したまま帰宅せず、その行方、消息については何の手掛かりもなく、その生死も不明であったが、行方不明になってから3年以上経過してから、峠の展望台の下方約120mの雑木林の中で、自動車と共に白骨化した遺体となって発見されたなど判示の事実関係の下では、上記消滅時効は、被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しない。」と判示していますが、これも、保険会社が徹底的に争った結果の1つです↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52297
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保険金請求しないので払わなかったは詭弁でしょう。
詐欺罪にならないのは、利権がらみだと確信しています。