2014年07月28日

羊水検査告知ミス、院長らに1千万円賠償命令 函館地裁 その2


この事件の続編です↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/399130290.html

羊水検査結果の告知ミスで、ダウン症のお子さんを出産、生後3か月で合併症でお子さんを亡くした両親に対する精神的慰謝料1千万円の支払を命じた函館地裁判決が、裁判所のホームページに掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84256&hanreiKbn=04

地裁の1審判決なのですが、判断が難しそうなので、合議事件にしていたのですね。

「被告らの注意義務違反行為がなければ原告らが人工妊娠中絶を選択しδが出生しなかったと評価することはできないというほかない。」として、告知ミスとお子さんの出生との間の相当因果関係は否定。

「ダウン症児として生まれた者のうち合併症を発症して早期に死亡する者はごく一部である」として、告知ミスとお子さんの死亡との間の相当因果関係も否定。

しかしながら、「被告らが、羊水検査の結果を正確に告知していれば、原告らは、中絶を選択するか、又は中絶しないことを選択した場合には、先天性異常を有する子どもの出生に対する心の準備やその養育環境の準備などもできたはずである。原告らは、被告αの羊水検査結果の誤報告により、このような機会を奪われたといえる。」「原告らは、δが出生した当初、δの状態が被告αの検査結果と大きく異なるものであったため、現状を受け入れることができず、δの養育についても考えることができない状態であったこと、このような状態にあったにもかかわらず、我が子として生を受けたδが重篤な症状に苦しみ、遂には死亡するという事実経過に向き合うことを余儀なくされたことが認められる。原告らは、被告αの診断により一度は胎児に先天性異常がないものと信じていたところ、δの出生直後に初めてδがダウン症児であることを知ったばかりか、重篤な症状に苦しみ短期間のうちに死亡する姿を目の当たりにしたのであり、原告らが受けた精神的衝撃は非常に大きなものであったと考えられる。」として、「原告らの精神的苦痛の重大性、被告αの過失の重大性等のほか、本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件に関する一切の事情を総合考慮すれば、原告らに対する不法行為ないし診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償として、原告らそれぞれにつき500万円の慰謝料を認めるのが相当である。」とのことです。

前2者を否定しながら、これらを精神的慰謝料の算定において最大限に斟酌するというのは、従前の裁判官の思考とは、やや趣きを異にするようにも思いますが、ご両親のコメントにもあるように、患者や家族に「心より添う医療」へつながることを、願いたいものです。

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posted by 森越 壮史郎 at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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