以下は、朝日新聞デジタル(2014年7月17日)からの引用です。
「DNA型鑑定で血縁がないと証明されても、それだけで一度決まった父子関係を取り消すことはできない。
最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は17日、3家族が争ってきた裁判の判決で、そうした判断を初めて示した。
血縁よりも「子の法的な身分の安定」を重視した。
5人の裁判官のうち、2人はこの結論に反対した。
父子関係を116年前に定義した民法の「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」が、現代の科学鑑定で否定されるかが最大の争点だった。
この日の判決では複数の裁判官が、新たなルール作りや立法などを求める意見を出しており、親子関係をめぐる議論が高まりそうだ。
争っていたのは北海道、近畿地方、四国地方の各夫婦(2夫婦はすでに離婚)。
訴えなどによると、このうち北海道と近畿の夫婦は、妻が夫とは別の男性と交際。
出産した子と交際男性との間でDNA型鑑定をしたところ、生物学上の父子関係が「99・99%」との結果が出た。
これを受けて妻が子を原告として、夫とは親子でないことの確認を求めて提訴した。
一、二審はいずれも父子関係を取り消す判決を出した。
「DNA型の鑑定結果は親子関係を覆す究極の事実」などと指摘した。
ともに父子関係の維持を求める夫側が上告した。
これに対して最高裁は、「科学的証拠によって生物学上の父子関係が認められないことは明らかであるうえ、夫婦がすでに離婚して別居している。それでも子の身分の法的安定を保つことは必要」と指摘。
そのうえで「夫と子の間に嫡出推定が及ぶ」として二審判決を破棄し、夫と子の父子関係を認めた。
この判断について反対意見を出した金築誠志裁判官は「夫婦関係が破綻(はたん)して子の出生の秘密が明らかになっている上、血縁上の父親と新たな親子関係を確保できる場合には、元の父子関係を取り消すことを認めるべきだ」などと指摘した。
一方、四国の夫婦をめぐる裁判は、夫がDNA型鑑定の結果を根拠に父子関係の取り消しを求めて提訴。
一審は「子の利益のため、確定した父子関係をDNA型鑑定で覆すことは許されない」と棄却し、二審も支持した。
北海道、近畿の裁判とは反対の判断を示していた。
最高裁も夫の上告を退け、判断を統一した。
〈嫡出推定〉
結婚している妻が出産した子は夫の子(嫡出子)と推定する、と定めた民法の規定。
父親を早期に決めて親子関係を安定させることが子の利益につながる、との考えにもとづく。
1898(明治31)年に定められたもので、DNA型鑑定などは想定していない。
妻が妊娠した時期に夫が海外に長期滞在していたり、刑務所に収容されていたり「明らかに夫婦の接触がない場合」は例外として「推定が及ばない」とされる。
ただし、子の出生を知ってから1年以内に限り、夫は父子関係の取り消しを求められるとしている。
この「1年」を過ぎた後でも夫婦の合意があれば、家裁の判断で父子関係の取り消しが認められることが多い。」
裁判所のホームページに、早速、3事件とも掲載されていますね↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84325&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84326&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84327&hanreiKbn=02
近年、親子関係に関する最高裁判決が幾つも言い渡されていますが、「認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ、この理は、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない。」と判示した平成26年1月14日第3小法廷判決だけが、法律よりも実体を重視しており、趣きを異にするように思います↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/385815420.html
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