以下は、朝日新聞デジタル(2014年7月9日)からの引用です。
「警察や検察の取り調べの録音・録画(可視化)を義務づける範囲が、裁判員裁判の対象事件などに限定されることが決まった。
可視化の義務づけは「供述への過度の依存を改める改革の柱」と位置づけられてきたが、対象は全刑事裁判の2%に限られることになった。
大阪地検の証拠改ざん事件をきっかけに、新しい捜査や公判のあり方を議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の9日の特別部会で、答申案が全会一致で承認された。
司法取引の導入や通信傍受(盗聴)の対象を拡大することも決定した。
証拠改ざん事件の被害者で、部会で委員を務めた村木厚子・厚生労働事務次官らは「冤罪(えんざい)防止のためには全面可視化が必要」と訴えてきた。
最終案はこうした声に配慮し、義務化の開始から「一定期間」が経過した段階で制度の見直しを検討する必要性を明記した。
部会後、記者会見した村木さんは「対象事件は絞られたが、可視化が義務化されるのは大きな一歩になる。具体的な実施に移るので、これからは(捜査当局など)関係者の努力が必要だ」と強調した。
可視化は、警察は裁判員裁判の対象事件、検察は裁判員裁判の事件と特捜部などによる独自捜査事件で義務化される。
法制審は今後、部会の結論を谷垣禎一法相に答申する。
法務省はこの答申に基づき、刑事訴訟法などの改正に着手する。改正案が成立すれば、刑事司法は大きな転換点を迎えることになる。
司法取引は日本で初めて導入される制度で、検察が被告の求刑を軽くする代わりに、他人の犯罪事実を明らかにさせることができる。
通信傍受は、現在は利用できる事件の種類が4類型だが、振り込め詐欺など9類型を加える。
いずれも「可視化によって取り調べで供述を得にくくなる」との理由から、捜査当局側が導入を求めていた。」
続いて、以下は、同じく朝日新聞デジタル(2014年7月10日)からの引用です。
(社説)刑事司法改革―妥協の産物ですますな
「冤罪(えんざい)への猛省から出発した3年間の議論の結果は、妥協の産物と言わざるをえない。
捜査や公判のあり方を見直す法制審議会の特別部会がきのう、答申案をまとめた。
焦点だった取り調べの録音・録画(可視化)を、警察・検察当局に義務づけるのは大きな一歩である。
だが、その対象は原則として、殺人・放火などの重大事件に絞り込まれた。
裁判になった事件の2%程度である。
一方で、司法取引の導入や、通信傍受の対象となる犯罪の拡大が盛り込まれた。
捜査当局が長年求めてきたことだ。
捜査・公判の問題を正すという本来の目標からそれてしまった印象が強い。
法制化の過程で、正す必要がある。
改革論議は、厚労省の村木厚子さんが罪をかぶせられた検察不祥事を契機に始まった。
取り調べの可視化は、戦後初めての司法制度改革を方向づけた01年の報告書で「将来的な課題」として先送りされ、実現は難しいとみられてきた。
それが10年余で浮上したのは、無期懲役から再審無罪となった足利・布川事件、パソコン遠隔操作事件での誤認逮捕など、やってもいないことを本人が認めた冤罪が相次ぎ明らかになったことが大きい。
取調官による供述の誘導や強要はかねて問題にされてきたが、深刻な現実となって現れたのである。
不正な取り調べを防ぐことが、取調室にビデオカメラを入れる発想の原点だったはずだ。
しかし当局は捜査への悪影響を理由に、対象を狭めようとした。
当局の委員からは、広範な可視化が前提なら席を立つかのような発言もあり、最終的には限定的になった。
冤罪のリスクは、事件の軽重に関係ない。
むしろ軽い処罰にとどまり勤務先にも分からないと説明され、やったと認めてしまうケースも少なくない。
制度としてもつ以上、より多くの事件を可視化の対象とすべきだ。
他の先進国でも定着している。
機材の準備に時間がかかるにしても、3年後、5年後と段階的に対象を広げる行程表を示すことはできないか。
いちど逮捕・勾留されたら罪を認めない限り釈放されにくい現状についても、はっきりした対策案は示されなかった。
村木さんが160日以上勾留され、経験したことである。
部会には村木さん、痴漢冤罪の映画を作った周防(すお)正行さんら専門外の人たちも加わったが、苦い思いを残した。
市民の感覚とかけ離れては、刑事司法は立ちゆくまい。」
この記事↓の続報ですが、弁護側にとって、随分と分の悪い取引だったように思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/400332985.html
勿論、複数の弁護士が委員となっており、元日弁連会長もいる訳ですが↓、全会一致で承認なんですね。
http://www.moj.go.jp/content/000122717.pdf
当然、個々の弁護士の個人的な見解という訳ではなく、日弁連の意向を反映している筈ですが、聞くところによると、「我々弁護士だけが反対しても」というのが、理由の1つだとか。
法曹人口増員の時にも、同じような話を聞いたように思いますが、その後の約10年で、結局、何を失い、それとひきかえに、何が得られたのでしょうか↓
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/iken-3.html
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