以下は、毎日新聞(2014年07月08日)からの引用です。
「◇法制審議会部会が法務省原案を大筋了解
法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会は8日、交通事故の被害者らの逸失利益を算定する際に差し引かれる「中間利息」の利率を、現状の5%から3%に引き下げたうえで変動制とする法務省原案を大筋で了解した。
利率が低いほど被害者に有利になる。
今月末に提示される取りまとめ案に盛り込まれる見通し。
法務省は法制審の答申を経て来年の通常国会への関連法案提出を目指す。
日本損害保険協会によると、生涯月収の平均が約41万円の27歳男性(扶養家族2人)が後遺障害で仕事ができなくなった場合、中間利息が5%だと逸失利益は約5500万円だが、3%では約7400万円に増える。
今回の見直しは、医療過誤や犯罪を巡る損害賠償請求訴訟にも影響を与える一方、保険会社の負担額が増えるため自動車保険などの保険料値上げなども想定される。
民法は特別な取り決めがない場合の利率(民事法定利率)を年5%としているが、中間利息に関する規定はない。
かつては中間利息を2%や3%とする地裁判決もあった。
最高裁が2005年に「法定利率を適用すべきだ」と判断して5%に統一されたが、「5%の運用益を見込むのは非現実的」との指摘があった。
法務省の原案によると、民事法定利率を3%に引き下げたうえで1%刻みの変動制に移行し、中間利息もこれと同様とする。
見直しは3年に1回で、過去5年間の貸出金利の平均が1%以上変動した場合に限るとしている。
部会は明治時代に定められた民法の契約・債権分野を時代に合わせて全般的に見直すため、09年に設置された。」
◇逸失利益と中間利息
事故や犯罪の被害者、遺族らが損害賠償を求めた場合、死亡や後遺障害がなければ得られたはずの「逸失利益」が算定される。
一度にまとめて受け取った賠償金を運用すると利息が発生するため、計算上の生涯収入から、生活費や利息分を差し引いた額が逸失利益となる。
この計算の際に差し引かれる利息を「中間利息」と呼ぶ。」
法制審議会の民法(債権関係)部会は↓
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingikai_saiken.html
逸失利益は、将来に向かって、日々発生するものですが、これを、先に全部支払って貰い、定期預金などにしておけば、利息が発生して、被害者が得をし過ぎるので、その分を差し引くべしというのが、中間利息の控除です。
1年定期にして、1年後、更に元利金を全部1年定期すれば、という発想で、複利計算になっているので、年数が長くなればなるほど、中間利息の控除が多くなります。
例えば、20歳で死亡した人が、67歳まで47年間働けたとすると、年5%で47年に相当するライプニッツ係数↓は17.981と、実に4割弱にまで減額されることになります(17.981÷47=0.38…)。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~Jusl/IssituRieki/keisuuhyou.html
1年物の定期預金の金利が年5%という時代であれば、それで問題がなかった訳ですが、この超低金利の時代に、それはあんまりだということで、札幌弁護士会の弁護士が、札幌高等裁判所に唯我独尊の裁判長がいる時代に、年3%という判決を勝ち取ったのですが、最高裁平成17年6月14日判決は、あっさりとこれを否定しました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52406&hanreiKbn=02
今回の改正により、5%から下がること自体は、良いことだと思いますが、なぜ3%なのですかね。
殆どゼロ金利の現状で3%にしたからと言って、まさか、金利が5%とかになれば、中間利息が8%とかになってしまうということはありませんよね。
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