以下は、毎日新聞(2014年06月29日)からの引用です。
「集団予防接種が原因のB型肝炎訴訟で、慢性肝炎などを最初に発症してから20年以上がたったため、民法で損害賠償請求ができる「除斥期間」を過ぎていると国が主張して和解に至っていない原告が、全国で200〜300人と推計されることが弁護団などへの取材で分かった。
国が被害者を救済する和解基本合意が成立して28日で3年。
基本合意では、除斥期間を理由に慢性肝炎患者間で和解金に差があるため、弁護団は同じ金額にするなど、柔軟な対応を求めている。
厚生労働省によると、5月末現在、提訴した原告は1万5456人で、このうち7900人が和解した。
全国B型肝炎訴訟東京弁護団長の柳沢尚武弁護士によると、係争中の原告で、除斥を巡り争っているのは、慢性肝炎200〜300人▽肝硬変10〜20人▽肝がん4人−−とみられる。
除斥期間は、民法上の権利を行使できる期間で、権利を行使しないまま20年以上経過すると、損害賠償請求権が消滅する。
この期間の起算点を巡っては、注射器使い回しを放置した国の責任を認めた2006年の最高裁判決で、慢性肝炎患者が「発症した時点」とされた。
これに対し、弁護団は、B型肝炎ウイルスは体内から完全な排除が難しく、病気の再発可能性があるため、再発した時点を損害の起算点にすべきだと主張している。
さらに、一連の訴訟で国が長く争ったことで、患者の多くが賠償請求に踏み切れなかったと指摘。
国の裁判引き延ばしで提訴できなかったとして、著しく公平の理念に反する場合は除斥期間の適用が制限できると訴え、柔軟な解釈を裁判所側に求めている。
柳沢弁護士は「基本合意で救済に差が出たことは将来の課題とした苦渋の選択だった。
国の予防接種により、多くの人が助かったのだから、除斥期間を機械的に適用せず、被害者を救済する仕組みにすべきだ」と訴える。
厚労省B型肝炎訴訟対策室は「課題とは認識しているが、基本合意書に基づいた対応しかできない」としている。」
【ことば】B型肝炎訴訟の和解基本合意内容
全国で争っていたB型肝炎訴訟の原告団と国との間で2011年6月、合意した。
裁判所は、被害者からの提訴を受け、予防接種による感染かどうかを審査した上で、救済対象者を認定。
国は和解金として、「除斥期間」を根拠に慢性肝炎のうち発症後20年未満には1250万円、20年以上は150万円(治療中なら300万円)▽未発症者(キャリアー)のうち感染から20年未満に600万円、20年以上に50万円−−を支払うなどとしている。
肝硬変や肝がんについては、除斥期間を巡る具体的な取り決めがない。」
続いて、以下も、毎日新聞(2014年06月29日)からの引用です。
B型肝炎除斥問題:「命ある今、救済を」被害の50代女性
「最初の発症から20年以上がたっているため、損害賠償請求ができる「除斥期間」を過ぎたとして推計で200〜300人の原告が国との間で和解が成立していないと分かった、集団予防接種を巡るB型肝炎訴訟。
その中の一人で関西地方在住の50代女性=大阪地裁で係争中=は「自分が生きている間に被害を認めて救済してもらいたい」と話す。
女性は14歳の時、B型肝炎ウイルスに感染していることが発覚した。
結婚し2人の子供に恵まれ、医者からワクチンを打つよう勧められたが、家計の負担を考えて子供にだけ接種し、自分は定期的な検査はしなかった。
1991年正月、帰省先の実家で激痛に襲われた。
診断の結果、重い肝がんと判明したが、女性には知らされなかった。
「もう手遅れ」と言う医師に、夫が「1%の望みがあるなら」と懇願して手術を受けることになり、一命を取り留めた。
3年後、主治医から肝がんだったと知らされた。
再発しやすいとされる5年がたち、「病気から解放された」と思っていた。
しかし、98年に肝がんを再発して再手術をした。
「どうして自分ばかりが……」と落ち込んだ。
それから10年以上がたち、B型肝炎訴訟を巡る報道で「自分もまさか」と思った。
母子感染でないことを確認し、91年2月に肝がんと分かった時のカルテなども残っていたため、原告団と国が和解で基本合意した後の2011年9月に大阪地裁に提訴した。
裁判で国は肝がんと判明して20年以上がたっているとして「除斥期間」を過ぎていると主張し、和解には至っていない。
女性は手術で数百万円を負担している他、今も検査などで年間20万円ほどかかる。
「好きでがんになったわけじゃない。今の薬が効かなくなるかもしれない」。
何度もくじけそうになったが、裁判所による救済を期待する。
「自分はまだ生かしてもらっている。この裁判が他の人たちの救済につながれば」。
涙をぬぐいながら訴えた。」
更に、以下は、朝日新聞デジタル(2014年6月28日)からの引用です。
島根)B型肝炎訴訟、進まぬ救済 基本合意3年
「B型肝炎訴訟で、原告らと国が和解に向けた基本合意をして、28日で3年が経った。
弁護団によると、県内で和解に至ったのは、推定被害者数の2千人を大きく下回る92人。
かつて余命を宣告され、和解した男性は「早く提訴し、進行を食い止める治療を」と呼びかける。
■和解男性「他の患者も早く」
松江市に暮らす70代の男性が体に異変を感じたのは、営業マンとして働き盛りだった40代半ば。
出張から帰宅すると、熱があり、ビール色の尿が出た。
B型急性肝炎と診断された。
健康には自信があり、医師の言うように「1カ月で治る」と思っていた。
だが、10カ月入院しても肝機能が回復せず、慢性肝炎に。
復職後も、深夜の救急病棟で点滴を受け、出張先に病院の紹介状を持ち歩く生活が続いた。
10年前、肝がんを発症した。
激痛に耐え、がんを焼き切り、抗がん剤を注入する手術を受けたが、再発を繰り返し、余命3〜5年と宣告された。
「この先、どうなるのか」。
大学進学前の子どもの顔が浮かんだ。
2006年、京都大学病院に転院。
2年後、妻から生体肝移植を受けた。
移植をしても5年後の生存率は7割とされたが、家族の後押しが支えになった。
薬の副作用で、腎機能の低下などの不安を抱えているが、ゴルフや海外旅行を楽しめるまでに回復した。
「自分は恵まれている方だ」と男性はいう。
仕事を辞めざるを得ない患者が多い中、勤め先に理解があり、仕事内容を変えて、治療を受けながら63歳まで勤めた。
11年、松江地裁に一斉提訴した際も、幼少期の注射痕が残っていたことや、90代の母親がいて母子感染でない証明ができたことで、半年で和解できた。
それでも、25年間の闘病生活で、保険適用外の移植手術や県外への通院費など、和解金の数倍の費用がかかり、家や土地を手放した。
何より、死に直面し、心が晴れる日はなかった。
「このつらさは患者やその家族にしか分からない」
感染が分かった元同級生の中には、病気を「黙っておいてくれ」という人や、裁判に踏み切れないまま亡くなった人がいる。
男性は訴訟を終えた今も、原告団の一員として街頭で署名活動に立つ。
自分と同じ苦しみを味わう人が減るように、検査を受けることの大切さや、医療費の助成拡大を訴えるためだ。
ウイルスの増殖を抑える内服薬や、がんをピンポイントに照射する放射線治療など、医療技術は進歩した。
「和解すれば、高額の医療費に見込みが立ち、治療の選択肢も広がる。まずは提訴してほしい」
■提訴の動き、広がらず
山陰弁護団によると、予防接種での注射器使い回しが原因でB型肝炎ウイルスに感染した人は、県内で2千人以上いるとみられる。
だが、これまでに提訴した被害者(死亡者含む)は113人で、鳥取県(205人)の約半分。
基本合意後も45、41、20人と、年々提訴する人が減っている。
自覚症状がないことが一因だ。
県薬事衛生課のまとめでは、02〜12年度にB型肝炎ウイルス検査を受けた40〜74歳の8万917人のうち、陽性者は1217人。
まだ検査を受けていない24万人の中にも潜在的な感染者がいるとみられる。
感染が分かっても提訴しない患者も多い。
訴訟自体を知らないことや、裁判への抵抗、偏見を恐れることなどが壁となっている。
早期発見が大切なため、県は、11市町の医療機関24カ所で実施していた無料の検査を、昨年、全19市町村の167カ所に広げた。
裁判では、予防接種を受けたことや母子感染でないことを証明できれば、症状に応じて3600万〜50万円の和解金が支払われ、症状が進んだ場合も差額が受け取れる。
和解するまで相談費用もかからない。
山陰弁護団は、平日の午前10時〜午後1時と午後2〜5時、専用ダイヤル(0859・30・2002)で相談を受け付けている。(小早川遥平)
〈B型肝炎訴訟〉
国が予防接種を義務づけた1948年から40年間に、注射器の使い回しが原因でB型肝炎ウイルスに感染した患者らが、国の責任を求めて起こした訴訟。
予防接種を受けたことなどが分かれば、肝がんや肝硬変などの症状に応じて和解金が支払われる。
国は感染者は百数十万人で、うち40万人以上が集団予防接種による感染と推計。
今年4月現在、全国で約1万1千人が提訴し、約6千人が和解している。
《B型肝炎 和解調印》
集団予防接種をめぐるB型肝炎訴訟で、全国原告・弁護団と菅政権は28日、和解のための基本合意書に調印した。
菅直人首相は原告の患者らと面談し、「国を代表して心からおわびします」と頭を下げた。
全国10地裁、原告727人に広がった集団訴訟は、最終的な決着を迎えた。
今後は、個別の和解手続きに入る。」
そして、以下は、北海道新聞(2014年6月29日)からの引用です。
B型肝炎、救済進まず 基本合意3年 道内20人和解できず死亡
「かつての集団予防接種で注射器の使い回しを放置し、ウイルスの感染拡大を招いたとして国の責任が問われたB型肝炎訴訟で、原告・弁護団と国が和解で基本合意してから3年が過ぎた。
だが、この間、救済手続きの第一歩となる提訴を行った人は全国で約1万2千人。
感染の証明書類をそろえるのが難しいことなどが主な理由で、提訴したのは推定される全被害者45万人の3%弱にすぎない。
提訴した人の和解手続きも大幅に遅れ、道内では約20人が和解を待たずに亡くなった。
「一刻も早い救済を」。
被害者の焦りは募る。
2011年6月28日に調印された基本合意は、国が被害者に50万〜3600万円の給付金を支払うことが柱。
被害者が国を相手に提訴し、国が予防接種での感染と認めて和解すれば支給される。
1948年7月〜88年1月に6歳以下で予防接種を受けた人が対象。
国は証拠として母子手帳や病院のカルテ、市町村の接種記録などの提出を求めるが、長い歳月が過ぎたため廃棄された例も多い。
証明の困難さが壁となり、提訴を諦める人や、実際は感染しているのに発症していないため病気に気づかず提訴に至らない人も多いとみられる。
全国弁護団事務局長の奥泉尚洋(たかひろ)弁護士(札幌)は「新たに提訴する人は減少の一途。感染に気づいていない人のために検査受診を呼び掛けていく必要がある」と指摘する。
全国B型肝炎訴訟北海道弁護団は道内各地で無料説明会を実施している。
弁護士が訴訟の概要や提訴の要件などを説明し、個別相談にも応じる。
日程、問い合わせは弁護団事務局(電)011・231・1941へ。」
B型肝炎訴訟に関するお問い合わせは、全国B型肝炎訴訟北海道弁護団↓の事務局までお願い致します。
http://www.b-kan-sosho.jp/
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全国B型肝炎訴訟北海道弁護団事務局
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