以下は、朝日新聞デジタル(2014年6月24日)からの引用です。
「消費者金融会社への過払い金の返還請求などをめぐり、東京都内の弁護士数人が、弁護士資格を持たない「整理屋」と呼ばれる業者から業務のあっせんを受けていたことが朝日新聞の取材でわかった。
「整理屋」はあっせんによって多額の利益を得たうえで、弁護士に報酬を支払っていた。
一連の行為は弁護士法に違反する疑いがある。
司法制度改革で弁護士が急増するなか、仕事に困った弁護士があっせんに頼っており、こうした法曹界の現状を「整理屋」が利用していた構図だ。
東京地検特捜部もこうした事実を把握し、同法違反の疑いなどで調べている。
朝日新聞の取材などによると、「整理屋」として弁護士に仕事をあっせんしていたのは、東京都台東区にあるNPO法人(すでに清算)の元理事長。消費者金融会社の元社員で、多重債務者から相談を受けて、過払い金返還請求などの業務を弁護士に紹介していた。
弁護士らは実質的に元理事長に雇われる形で、元理事長は都内に弁護士のために事務所を用意し、事務員らも派遣していた。
弁護士らが消費者金融会社と交渉し、過払い金はいったん弁護士名義の口座に振り込まれるが、この口座は事実上NPO法人が管理。
元理事長はここから利益を得たうえで、弁護士には月に50万〜100万円程度の報酬を支払っていたという。
元理事長は2008年以降、少なくとも3千人以上の顧客を7人の弁護士にあっせんし、約3億8千万円の利益を得ていたという。
元理事長は朝日新聞の取材に「弁護士に債務者を紹介し、利益を得ていたのは事実」と証言。
弁護士の1人も「1年半で200人ほど紹介された。業務は派遣された事務員にほぼ任せていた。違法だと分かっていた」と話した。
弁護士法は、弁護士でない業者らが報酬を得る目的で法律事務を弁護士にあっせんしたり、弁護士があっせんを受けたりすることを禁じている。
この問題をめぐっては、元理事長が所得税約1億5千万円を脱税したとして、東京国税局が所得税法違反の疑いで東京地検に告発している。
■「簡単にもうかる仕事でありがたい」
あっせんを受けていたのは、仕事がなくて困っていた弁護士だった。
取材に応じた複数の弁護士が経緯を明かした。
50代の弁護士は1980年代に弁護士になり、バブル経済が崩壊する前は年収が2千万円近い年もあった。
だが、司法制度改革で弁護士が急増してからは年収が約600万円に。
2008年から2年間、元理事長から数百人の顧客を紹介された。
「簡単にもうかる仕事でありがたかった」
40代の弁護士は6年前、知人に元理事長を紹介され、「困っているなら仕事を紹介しますよ」と誘われた。
この弁護士は弁護士会から懲戒処分を度々受け、仕事がほとんどなくなっていた。
元理事長が用意したJR神田駅近くの雑居ビルの一室で、5年間で約1千件の仕事をこなした。
「法に触れるとは分かっていたが、助けてくれると思い、話に乗ってしまった」
日本弁護士連合会は01年から、こうした問題への対策委員会を設けているが、懲戒処分を受ける弁護士は減っていない。
同会副会長の高中正彦弁護士は「倫理研修を強化したい」と話す。
最高裁によると、過払い金などの返還訴訟は06年から急増し、09年には民事訴訟全体の6割を占める14万件以上に。
増え続ける弁護士の収入を実質的に補う面もあった。
しかし、過払い金の問題自体が解消されたため、返還訴訟も12年には7万件弱と半減。
日本貸金業協会によると、16年ごろにはほぼなくなると見込まれている。
仕事を得られない弁護士が違法行為に走らない対策が求められている。
〈過払い金返還訴訟〉
金融業者に払いすぎた利息を取り戻す訴訟。
いわゆる「グレーゾーン金利」をめぐり最高裁が2006年、利息制限法の上限(年15〜20%)を超える金利での貸し付けを原則無効と判断。
これを根拠に、時効(10年)にかからない過払い分を返還する訴訟が急増した。
03年から、弁護士だけでなく司法書士も請求業務ができるようになり、業務の獲得競争が激しくなった。
ただし、16年には返還訴訟はほぼなくなるとみられている。」
過払バブルはとうの昔に終焉したものの、交通事故その他、様々な分野のNPO法人なるものがあるようですが、どんなものなのでしょうかね。
そもそも、非弁提携が、業務停止という非常に重たい懲戒事由となることは、百も承知で行っている訳ですし、弁護士会側にしても、まともに倫理研修を受けるような弁護士が、このような不祥事を起こすことはないことも、百も承知だと思うのですが。
そう言えば、「完全成功報酬制でホームページに掲載しませんか」などと、実に能天気に電話をかけてるく業者さんもいますが、これも問題なしとは思えないのですが。
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弁護士3人在宅起訴へ=債務者あっせん受ける−東京地検
過払い金返還請求手続きなどの債務整理で、無資格者から多重債務者のあっせんを受けた疑いが強まったとして、東京地検特捜部が近く、弁護士法違反(非弁提携)罪で、弁護士3人を在宅起訴する方針を固めたことが8日、関係者への取材で分かった。
あっせんしたNPO法人の元代表(49)も弁護士法違反(非弁行為)罪で在宅起訴する。
弁護士らは取材に対し、あっせんを受けたことを認めたが、「誰から紹介されたかは知らなかった」と述べた。
元代表も「債務者を弁護士に紹介したが、ボランティアでやった」と話していた。
関係者によると、元代表はNPO法人「ライフエイド」(台東区、解散)などを設立し、ホームページなどを通じて多重債務者を集め、弁護士3人に紹介。
元代表らが、弁護士事務所に派遣した事務員を使って債務整理をしていたとされる。
更に、以下は、時事ドットコム(2014/07/09)からの引用です。
弁護士3人を在宅起訴=NPO元代表が債務者紹介−非弁提携で・東京地検
過払い金返還請求手続きなどの債務整理で、無資格者から多重債務者のあっせんを受けたとして、東京地検特捜部は9日、弁護士法違反(非弁提携)罪で、第一東京弁護士会の宮本孝一(46)、東京弁護士会の吉田勧(53)、岩渕秀道(81)各弁護士を在宅起訴した。
あっせんしたNPO法人の小林哲也・元代表(49)は、同法違反(非弁行為)罪と、債務整理で得た収入を申告しなかったとする所得税法違反罪で在宅起訴した。
起訴状などによると、宮本弁護士ら3人は2011年8月〜12年2月ごろ、小林元代表から債務整理の委任を希望する計11人の紹介を受けた。
元代表は、債務整理で得た収入を弁護士らの収入として申告させるなどし、11年までの3年間で所得税約1億4500万円を脱税したとされる。
関係者によると、小林元代表は事務員を弁護士事務所に派遣。
債務整理に必要な弁護士名義の口座の管理などをしていたという。
小林元代表は08年ごろから、今回在宅起訴された3人を含む少なくとも7人の弁護士と提携し、債務整理を行っていたとみられる。
半数以上は、弁護士法の公訴時効(3年)が経過していたり、既に死亡していたりするため、刑事責任を問うことはできないという。