以下は、YOMIURI ONLINE(2014年05月29日)からの引用です。
「社会保険事務所のずさんな対応で年金の加入記録が見つからなかったのに、死亡した夫の遺族厚生年金が時効を理由に支払われないのは不当として、兵庫県の60歳代の女性が国に支給を求めた訴訟で、大阪地裁は29日、23年分計約2200万円の支払いを命じた。
田中健治裁判長は「組織全体で不適切な相談対応を繰り返しており、時効を適用するのは信義則に反する」と述べた。
原告側の弁護士によると、持ち主不明の年金記録が約5000万件に上った「年金記録問題」の発覚(2007年)後、社会保険事務所の対応を違法として時効の適用を認めず、年金支給を命じた司法判断は初めて。
判決によると、女性は、会社員の夫(当時31歳)が死亡した1981年以降、2007年までに約10回、社会保険事務所で受給を相談。
その度に「年金に加入している記録はない」と説明された。
09年に事務所へ行った際に記録があることがわかり、女性は死亡時以降の支給を申請。
しかし、当時の社会保険庁(現・日本年金機構)は、会計法上の時効を適用し、過去5年より前は支給できないと決定した。」
この論調からすると、時効期間が経過する前に、社会保険事務所に足を運んだりしたことが立証できなれば、5年間の消滅時効が認められてしまう、ということのようですね。
そう言えば、年金記録確認第三者委員会の委員をしていた際にも、そのような議論がありました。
「遡って5年分」ということなので、「何でですか」と尋ねたところ、「時効だからです」と言われ、その時は、5年分でも結構な金額ということもあって、深く考えずに、そういうものかと思いましたが、自分が年金を受給できるかどうか、受給できるとしたら幾ら受給できるかなんて、具体的な資料も、専門的な知識も持ち合わせていない受給者側には、わからないのが当たり前なのに、国側のミスで、本当は受給資格があるのに、長年、受給資格がないものと取り扱われていたことがようやくわかったと思ったら、その時点で、5年より前の分は時効消滅しているから受給できないということ自体が、おかしいのではないでしょうか。
社会保険事務所に足を運んだりしたことが立証できなくても、本件のように信義則による権利濫用を広く認めるとか、あるいは、国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めていますので、国側のミスで、年金受給権が時効消滅してしまったこと自体に対する損害賠償責任を認める、という訳には行かないものでしょうかね。
本来、支給すべき年金だった訳ですから、それで国側が損をする訳ではありませんし、本当は、立法的解決をすべき問題なのではないかと思います。
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