以下は、日本経済新聞電子版(2014/5/2)からの引用です。
「法科大学院を出なくても司法試験の受験資格が得られる「予備試験」の今年の志願者が約1万2600人に達し、学生離れが続く法科大学院の志願者総数を初めて上回ったことが分かった。
政府は法科大学院教育のてこ入れなどの対応を急ぐものの、事態が好転する兆しは見えない。
法科大学院を法曹養成の中核に据える司法制度改革の手詰まり感が一段と鮮明になってきた。
予備試験は本来、経済的事情などを抱えた人向けの例外的制度で、合格すれば法科大学院を修了せずに司法試験に挑戦できる。受験資格や回数制限はなく、誰でも受験可能だ。
合格率は過去3回の平均で3.0%と、超難関で知られた旧司法試験並みの狭き門だが、修了に2〜3年かかる法科大学院を避けるための「抜け道」として使う人が近年急増している。
法務省によると、2014年に実施される予備試験の志願者数は約1万2600人で、前年より1割以上増えて過去最多を更新した。
予備試験経由で司法試験に合格した人に対し、弁護士事務所が就職面で厚遇する動きが出ていることなども、志願者増を後押ししているとみられる。
一方、法科大学院の志願者は減少傾向が顕著だ。
日本経済新聞社が各大学院の14年春入学の入試での志願動向を集計したところ、志願者総数は1万1千人前後にとどまったことが分かった。
前年の約1万3900人から大幅に減った。
東京大や京都大、早稲田大で約2割減、一橋大で約3割減となったほか、上智大などはほぼ半減するなど、主要校が軒並み志願者を減らし、増えたのは慶応大などごく一部だった。
この結果、法科大学院の志願者総数が、初めて予備試験の志願者数より少ない事態になった。
政府は法曹養成のあり方について、年3千人としていた司法試験合格者目標の見直しを検討しているほか、実績の上がらない法科大学院への財政支援をカットして「退場」を促すといった対策を進めている。
ピーク時に74校あった法科大学院だが、学生離れによる撤退が相次ぎ、15年に学生を募集するのは59校にとどまる見通しだ。
▼予備試験
司法試験の門戸を法科大学院以外にも広げる目的で2011年に始まった。
民法や刑法などの法律科目を中心に短答、論文、口述の3種の試験を毎年5〜10月に実施する。
法科大学院修了者と同等の学識や実務の素養を身につけているかを測るとされる。
合格すると、翌年以降の司法試験を受験できる。
昨年の司法試験では、予備試験経由の受験者は167人中120人が合格し、合格率は71.9%に達した。
一方、法科大学院経由の合格者は1929人、合格率は25.8%だった。」
続いて、以下は、同じく日本経済新聞電子版(2014/5/2)からの引用です。
法科大学院、学生離れに危機感 司法制度改革 手詰まりに
「学生離れが止まらない現状に、法科大学院側は危機感を募らせている。
一方、学生側には高い学費などから法科大学院制度に否定的な声もあり、事態打開に向けた展望は開けないままだ。
「予備試験に落ちた人が行くという印象が定着し、法科大学院教育は崩壊寸前だ」「受験対策意識が強くなり、優れた法曹養成という視点が弱まっている」。
文部科学省が今年2月にまとめた全法科大学院へのアンケートの自由記述からは、予備試験への警戒感がにじみ出た。
司法制度改革は旧司法試験の「点による選抜」を改め、法科大学院での実務教育を通じて「質量ともに豊かな法曹人を養成する」のが狙いだった。
ところが旧試験に似た性格の予備試験が急速に支持を広げ、改革の理念が頓挫する懸念が強まっている。
学生の間からは「予備試験があれば法科大学院は不要」といった声も出ている。
政府の法曹養成に関する有識者会議の議論でも「予備試験がブランド化し、法科大学院を駆逐する勢いになっている」といった懸念が噴出した。
「法科大学院が本来の期待に応えていないだけ」(吉戒修一・元東京高裁長官)との見方も根強いが、解決への近道は見つかっていない。」
更に、以下は、日本経済新聞電子版(2014/5/8)からの引用です。
法科大学院の入学者、定員の6割 過去最低を更新
「文部科学省は8日、今春の法科大学院の入学状況をまとめた。
入学者総数は2272人、全67校の定員に占める割合(充足率)は60%で、いずれも過去最低を更新。
全体の91%にあたる61校が定員割れで、28校では入学者が10人未満だった。
定員削減や統廃合が進んでいるものの、学生離れに追いつかない現状が浮き彫りになった。
文科省は統廃合を促すため、定員充足率や司法試験合格率の低い法科大学院への補助金カットを決めているが、学生の進級時に「共通到達度確認試験(仮称)」を設ける方針を新たに決めた。
成績が悪い学生に法曹とは別の進路を勧めることも想定している。
今年度中に試行したい考え。
2014年の法科大学院全体の定員は3809人。
最も多かった05〜07年(5825人)と比べると3割以上減った。
入学者数の全体は13年より426人減り、定員充足率は3ポイント低下した。
定員割れの学校が全体の9割を超えたのは2年連続。
定員充足率が低い法科大学院は東海大(3%)、新潟大(5%)、神奈川大(8%)、愛知学院大(10%)、北海学園大(12%)など。
東海大と新潟大は入学者が1人で、いずれも15年春から学生募集を停止すると発表している。
充足率が100%を超えたのは千葉大、首都大学東京、一橋大、筑波大、京大、大阪大の6校。
そのほか東大(93%)や神戸大(96%)、中央大(88%)、慶応義塾大(87%)など司法試験の合格率が比較的高い法科大学院に人気が集中する傾向が鮮明になっている。
法科大学院はピーク時に74校あったが、1校が廃止、15校が募集停止を表明しており、現時点で58校まで減る見通し。」
法曹界が急激に魅力を失い、有能な人材が集まらなくなりつつあります。
これが司法改革の本当の狙いなのではないでしょうか。
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