2014年05月07日

ダンス「クラブ」:無許可の元経営者に無罪判決 大阪地裁


以下は、毎日新聞(2014年04月25日)からの引用です。

◇「性風俗を乱す風俗営業とは認められず、許可は不要」

客にダンスをさせる「クラブ」を無許可で営業したとして、風営法違反の罪に問われたクラブ「NOON(ヌーン)」(大阪市北区)の元経営者、金光(かねみつ)正年被告(51)に対し、大阪地裁は25日、無罪(求刑・懲役6月、罰金100万円)を言い渡した。

斎藤正人裁判長は「実質的に、性風俗を乱す営業だったとは認められない」と述べ、風営法の許可は不要と判断した。

無許可営業のクラブに対する警察の摘発が相次ぐが、クラブは風俗営業ではないとした司法判断は初めてとみられる。

風営法の規制については「公共の利益を保護するため必要な措置で、表現の自由が制約されてもやむを得ない」として、憲法に反しないとした。

判決はまず、風営法の規制対象となる「ダンス営業」について、「性風俗の乱れにつながる恐れが実質的に認められる営業に限られる。踊り方や客の密集度などを総合判断すべきだ」との基準を示した。

そして、ヌーンでは客同士の距離は30センチ程度に近付くことはあったが、密着する状況ではなかったと指摘。

「客の踊りは、音楽にあわせステップを踏み、手や首を動かすのが大半だった。激しいものでも腰をひねるなどした程度で、単に盛り上がっていたに過ぎない」と解釈した。

そのうえで「店内ではわいせつな行為を招く演出もなく、享楽的な雰囲気はなかった」として、風俗営業ではないと結論付けた。

金光被告は2012年4月、無許可でヌーンを営業、ダンスフロアで客に踊らせ、酒類を提供したとして起訴されたが、「風俗営業でなく、許可は不要」と一貫して無罪を主張した。

弁護側は「風営法のクラブ規制は表現の自由を侵害し、憲法違反だ」と訴えた。

大阪地検の北川健太郎次席検事は「判決内容を精査して、適切に対応する」とのコメントを出した。

◇ことば「風俗営業法」

青少年の健全な育成のため、ダンス営業やパチンコ店を風俗営業とし、営業時間や区域を制限している。

営業には公安委員会の許可が必要で、無許可の場合、2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科せられる。

ダンス営業については「設備を設けて客にダンスをさせ、飲食させること」と定義する。」




風俗営業法2条1項4号は、単に、「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」と定義しているに過ぎません。

ところが、裁判官は、同法1条の「この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。」という目的や、同法2条1項に列挙されている他の風俗営業との対比において、「性風俗を乱すおそれがある享楽的なダンスをさせる営業」と限定的に解釈した上で、無罪と判断したということになります。

弁護人の「規制はダンスをする客らの表現の自由などを侵害する」という主張に対しては、そもそも、このような広範な定義自体が、表現の自由に対して萎縮的効果を与えるので違憲、という方向に行ってもおかしくないところですが、「公共の利益を保護するため必要な措置で、表現の自由が制約されてもやむを得ない」ということで、サラリと流していますね。

許可を得ることによって公安委員会に屈服したくない店側と、公安委員会の権限下に置きたい検察側、どちらに転んでも、最高裁まで行くのでしょうね。

ところで、コメントを出した大阪地検の北川健太郎次席検事は、私の修習生時代の指導担当でした。

先日、挨拶状を頂いたばかりなのに、色々大変ですね。

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posted by 森越 壮史郎 at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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