以下は、時事ドットコム(2014/02/27)からの引用です。
「仙台市で2004年、知人を殺害し現金を奪ったとして、強盗殺人などの罪に問われた小谷野裕義被告(41)の控訴審判決が27日、仙台高裁であり、久我泰博裁判長は一審仙台地裁の無期懲役判決を破棄し、懲役15年を言い渡した。
同被告は一審の裁判員裁判で懲役15年とされたが高裁が差し戻し、制度導入後初となる裁判員裁判のやり直しが行われ、無期懲役が言い渡されていた。
久我裁判長は、無期懲役が確定した仲間の男(39)との共謀を認め、強盗殺人罪が成立すると判断。
一方で、実行役ではないことや、被害者遺族に賠償金など計約1200万円を支払ったことなどを考慮した。」
この報道だけ読むと、初めの裁判員裁判は懲役15年→高裁は刑が軽すぎると破棄差戻→2度目の裁判員裁判は無期懲役→高裁は今度は破棄自判で初めの裁判員裁判と同じ懲役15年ということなのかな、だとすれば何のこっちゃ、ということになるでしょうね。
新聞各社、報道の内容は微妙に異なりますが、以下は、毎日新聞(2014年02月27日)からの引用です。
仙台殺人:差し戻し控訴審 強殺共謀認定し懲役15年判決
「強盗殺人罪などに問われ、全国で初めて差し戻しとなった裁判員裁判で無期懲役を言い渡された無職、小谷野裕義被告(41)の控訴審判決が27日、仙台高裁であった。
久我泰博裁判長は、1200万円余の被害弁償をしていることなどを考慮して2度目の1審判決を破棄、1度目の1審判決と同じ量刑となる懲役15年(求刑・無期懲役)を言い渡した。
1度目の1審は強盗致死罪などを適用したが、2度目の1審判決と同様、強盗殺人罪の事実認定をした。
判決によると、小谷野被告は実行役の男(39)=無期懲役が確定し服役中=らと共謀して2004年9月、仙台市内で風俗店経営の男性(当時30歳)を殺害、現金約5000万円を奪うなどした。
男性の遺体は見つかっていない。
公判では、殺害行為には関与しなかった小谷野被告と実行役との共謀関係が認定されるかが争点となった。
仙台地裁での1度目の裁判員裁判判決(10年10月)は殺害の共謀を否定し懲役15年だった。
だが、1度目の仙台高裁判決(11年7月)は「暗黙の共謀が成立していた可能性が高い」と指摘したうえで審理不十分として差し戻し、最高裁で差し戻しが確定した。
2度目の仙台地裁の裁判員裁判判決(13年2月)は共謀関係を認め、強盗殺人罪を適用し無期懲役を言い渡した。
久我裁判長はこの日の判決で「実行役が被害者を殺害することを認識していた」などとして共謀関係を認定。
「被害者を実行役に引き渡すなど犯罪の実現に不可欠な役割を果たしており、責任の重さは実行役と同等で、2度目の1審判決に誤りはない」と判断した。
一方で、2度目の1審判決後にも610万円を被害弁償していることから「被害弁償をしていない実行役と同じ無期懲役にするのはちゅうちょせざるを得ない」として減刑した。
小谷野被告側の青木正芳弁護士は量刑を評価したうえで「裁判員裁判を2度行ったことについての検証、指摘はなく、もっと裁判員制度への示唆に富む判断を示してほしかった」と話した。
仙台高検は「判決内容を検討のうえ適切に対応したい」とコメントした。」
初めの裁判員裁判は殺人の共謀を認めず強盗致死罪で懲役15年→高裁は共謀を認めないのはおかしいと破棄差戻→2度目の裁判員裁判は共謀を認め強盗殺人罪で無期懲役→高裁は2度目の裁判員裁判の時点では強盗殺人罪で無期懲役は妥当だがその後610万円も被害弁償しているので減刑して懲役15年、ということです。
「でも、結局懲役15年という結論は変わらないんだから意味ないじゃん」という声が聞こえてきそうですが、事実と異なる判断が正されたこと(本当に共謀があったという前提ですが)、被告人に対して、一度は無期懲役という刑が宣告され、内省が深められたであろうこと、その甲斐あってか、充分ではないとは言え、遺族らが被害弁償を受けられたこと等、充分意味はあると思います。
それでも、「そんなことのために、裁判員に負担をかけるなよ」と言われると、それ以上、返す言葉はありません。
「裁判員裁判を2度行ったことについての検証、指摘はなく、もっと裁判員制度への示唆に富む判断を示してほしかった」という指摘は、確かにその通りかも知れません。
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