以下は、毎日新聞(2014年02月18日)からの引用です。
「大阪府警北堺署に窃盗事件で誤認逮捕された男性会社員(42)が18日、国と府を相手取り、計約1100万円の国家賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
男性は85日にわたって不当に勾留された上、府警や大阪地検堺支部に犯人と決め付けられ、精神的損害を受けたと主張している。
男性は昨年4月、堺市北区で給油カードを盗んだとして窃盗容疑で逮捕された。
同5月には、市内のガソリンスタンド(GS)でカードを使い給油したとして再逮捕され、地検堺支部に窃盗罪で起訴された。
しかし、男性の弁護人の調査でアリバイが判明、同7月に起訴が取り消された。
訴状で男性側は、GSの防犯カメラの時刻が実際とずれていたのに、府警の捜査員が確認など基本的な捜査を怠り、誤認逮捕を引き起こしたと指摘。
取り調べでも「汚れた手で子どもの頭をなでられるのか」と、人格権を侵害する発言で自白を迫ったと訴えている。
検察官にも、必要な捜査を指示せず起訴した責任があるとしている。
男性は勾留時のことを思い出し、以前のようには働けない状態といい、代理人の赤堀順一郎弁護士は「精神的損害や収入の減少は、国の刑事補償だけでは賄いきれず、賠償してもらうのが筋だ」と話している。」
この事件の続報ですね↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/371178243.html
被疑者補償規程や刑事補償法により認められる補償金は、1日あたり1万2500円が上限です。
身柄の拘束は24時間ですから、1時間あたりの補償金は僅か500円余りということになります。
当然、そんな金額では納得できないでしょうし、何も悪いことをしていないのに逮捕、勾留、そして起訴後も勾留されたのですから、国家賠償法による損害賠償が認められて当然と思われるかも知れませんが、必ずしもそういう訳ではありません。
最高裁昭和53年10月20日判決↓は、 「刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留,公訴の提起・追行、起訴後の勾留が違法となるということはない。けだし、逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められるかぎりは適法であり、公訴の提起は、検察官が裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから、起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるからである。」と判示しています。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53226&hanreiKbn=02
逮捕や勾留には、裁判所も1枚噛んでいるからだとは、思いたくはないですが。
ただ、本件の場合、私人である弁護人1人の調査で、簡単に誤認逮捕だったことが判明した訳ですから、国家賠償法による損害賠償が認められて然るべきだと思います。
このブログの筆者のホームページはこちら