2014年02月05日

裁判盗み撮り横行 小型カメラ使用、ネット流出


以下は、長文ですが、朝日新聞デジタル(2014年1月26日)からの引用です。

「東京地裁や高裁が「盗み撮り」に神経をとがらせている。

昨年10月、高裁の法廷内を撮った動画がネットに流出。

その後、傍聴者の所持品検査で、高性能の小型カメラが見つかった。

その後も、判決言い渡しの画像などの流出が相次ぎ、根絶には至っていない。

■厳重な検査、困難

「録音や撮影はできません。疑わしいことがあれば退廷していただきます」

今月21日、東京地裁。

オウム真理教元幹部平田信(まこと)被告(48)の公判の冒頭で、斉藤啓昭(ひろあき)裁判長が傍聴席に呼びかけた。

元教団幹部の中川智正死刑囚(51)が証人で出廷。

地裁職員ら10人以上が目を光らせた。

携帯電話や録音機など、電子機器の持ち込みを禁止。

金属探知機を導入したうえ、ハンカチ、名刺入れ、メモ帳はすべて開いて確認する念の入れようだ。

背景には防犯対策とともに、昨年10月中旬に起きた「事件」があった。

同じ建物に入る東京高裁の法廷で、参院選の無効を求めた訴訟の口頭弁論を撮影した動画がネット上に流出。

傍聴席から撮ったとみられ、審理中の法廷内の様子が映っていた。

動画サイトに投稿され、別のサイトにも転載された。

高裁はその後、同種訴訟を中心に、金属探知機を使って厳重に所持品を検査。

法廷内に見張りの職員を配置して警戒した。

そこで、高性能の超小型カメラが内蔵されたメガネを持っている傍聴人を発見。

持ち込みは水際で防がれたとみられた。

だが、その後も動画の流出は止まらない。

メガネ型やペン型、腕時計型などの小型カメラで撮られた可能性がありそうだ。

高裁は、流出のたびにサイトの運営会社に削除を要請している。

だが「転載が繰り返されると、ネット上から完全に消去するのは不可能だ」と関係者は頭を抱える。

厳重な所持品検査をすべての法廷で実施するのも現実的でない。

あるベテラン裁判官は「法廷の様子がネットに流出すると、当事者や傍聴者のプライバシーが侵害されるだけではなく、真実の証言が要求される証人が萎縮する。事実の解明に大きな支障が出る」と訴える。

■米英ではテレビ中継も

日本の裁判所では、報道などの目的で裁判官の許可があった場合、審理が始まる前の廷内の撮影が認められている。

しかし、無断撮影は「当事者の人権や法廷の秩序維持」を理由に、民事訴訟規則と刑事訴訟規則で禁じられている。

1999年には、法廷で無断撮影された「和歌山カレー事件」の林真須美死刑囚の写真が雑誌に掲載された。

死刑囚側は肖像権侵害だとして提訴。

「公共性がある」と反論した出版社側に賠償を命じる判決が、2005年に確定した。

一方、テレビ中継が認められている国もある。

英国では昨年11月、法改正によって、一部の裁判所で法廷の生中継が可能になった。

米国では広く認められており、1995年には元妻ら2人への殺人罪に問われ、無罪判決が言い渡された米プロフットボールの元スター選手、O・J・シンプソン氏の法廷がテレビ中継された。

米国の裁判に詳しい太田宏美弁護士(第二東京弁護士会)は「日本では裁判が『トラブルを解決する場』としてマイナスのイメージを抱かれがちだが、米国では『権利を主張できる場』ととらえられることが多い」と指摘。

米国で中継まで行われている背景には、考えの違いがあるとみる。

日本では、傍聴人による法廷でのメモすら禁じられていた。

米国人弁護士が起こした訴訟の最高裁判決で1989年にようやく解禁された経緯がある。

法廷の「公開度」は、欧米が先を進んでいるのが実情だ。

東京高裁で裁判長を務めた門野博・法政大法科大学院教授は「日本では、当事者や傍聴人のプライバシー保護が最優先されており、国民の多数もそれを受け入れているのではないか。中継を認めるかどうかの議論が盛り上がるには、時間がかかるだろう」と話す。」




メモが解禁される契機となった最高裁平成元年3月8日判決は↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52213&hanreiKbn=02

配慮を欠いていたことは認められるものの、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使に当たるとまでは言えないとして、損害賠償請求自体は認めませんでしたが、「裁判所としては、今日においては、傍聴人のメモに関し配慮を欠くに至つていることを率直に認め、今後は、傍聴人のメモを取る行為に対し配慮をすることが要請されることを認めなければならない。」と判示しました。

それにしても、生中継をしている国さえあるのに、なぜ我が国の裁判所はそこまで「盗み撮り」に神経をとがらせているのでしょうかね。

裁判所ですから、「ルールは守りましょう」というのは当然といえば当然ですが。




と思っていたら、以下は、MSN産経ニュース(2014.1.31)からの引用です。

裁判官、被告に「暴言」で慰謝料3万円 国に支払い命令 長野地裁

「民事訴訟の法廷で裁判官から暴言を吐かれ、裁判が公平に実施されなかったとして、長野県飯田市の男性が国などに約220万円の賠償を求めた裁判の判決で、長野地裁飯田支部(加藤員祥裁判官)は、感情的な発言だったと認め、国に慰謝料3万円の支払いを命じた。

30日付。

判決によると、男性は自動車ディーラー会社が損害賠償などを求めた訴訟の被告。

この訴訟は平成22〜23年に飯田支部であり、23年8月の口頭弁論で、担当の樋口隆明裁判官(58)が男性に向かって「あなたの審理が終わらないので上司から怒られている。左遷の話まで出ている」などと怒ったように言った。

加藤裁判官は樋口裁判官の発言が男性に精神的苦痛を与えたと認定。

裁判自体は公平だったとの判断を示した。

長野地裁総務課は「個別事案に対してコメントできない」としている。」




まさかこういう理由という訳ではないと思いますが、弁護士であれば、似たような暴言を吐かれた経験は、皆さんお持ちなのではないかと思います。

勿論、ごく一部の裁判官のお話で、本件とは全く逆の素晴らしい裁判官もいらっしゃいました。

私が弁護士になって間もない時代のことですが、土地の賃借人が建物を所有しており、入居者はその建物を賃借して商売を営んでおり、家賃を滞納したことはなかったのですが、建物の所有者が、土地の所有者に対する地代を長期間にわたり滞納したことから、土地の所有者が、建物の所有者に対しては建物を撤去した上での土地の明渡しを、入居者に対しては建物からの退去した上での土地の明渡しを求めた事件がありました。

私は、証人尋問が終わった後に、入居者から相談を受けて受任したのですが、現行法上は、請求が認められない理由はありませんので、裁判官にしてみれば、判決を書こうと思えばいつでも書けるのに、その結果として、何も悪いことをしていない入居者が甚大な不利益を被ることから、いつまでも、いつまでも、粘り強く和解を勧めてくれました。

土地の所有者である原告の代理人の弁護士も、建物の所有者である相被告の代理人の弁護士も、辛抱強く付き合ってくれました。

余りに古い話で記録が残っていませんし、記憶も定かではないのですが、確か、そうこうしているうちに、原告である土地の所有者が亡くなり、遺族の訴え取り下げにより、終了したように記憶しています。

本当は、こういう裁判官こそが、裁判所内においても、高く評価されるべきではないかと思うのですが、残念ながら、この暴言を聞くまでもなく、速さばかりが求められているのが実情のようです。

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posted by 森越 壮史郎 at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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