以下は、朝日新聞デジタル(2014年1月19日)からの引用です。
「DNA型鑑定で血縁関係がないと証明されれば、父子関係を取り消せるかが争われた訴訟の判決で、大阪家裁と大阪高裁が、鑑定結果を根拠に父子関係を取り消していたことがわかった。
いったん成立した親子関係を、科学鑑定をもとに否定する司法判断は、極めて異例だ。
■民法は「夫の子」、最高裁で審理中
訴訟は最高裁で審理中。鑑定の精度が急速に向上し、民間機関での鑑定も容易になるなか、高裁判断が維持されれば、父子関係が覆されるケースが相次ぐ可能性がある。
最高裁は近く判断を示すとみられ、結果次第では、社会に大きな影響を及ぼしそうだ。
争っているのは、西日本の30代の夫婦。
2012年4月の一審・大阪家裁と同年11月の二審・同高裁の判決によると、妻は夫の単身赴任中、別の男性の子を妊娠。
夫は月に数回、妻のもとに帰宅しており、実の子だと疑っていなかった。
その後、妻と別の男性の交際が発覚。
妻は夫に離婚を求め、子と交際男性との間でDNA型鑑定を実施したところ、生物学上の父子関係は「99・99%」との結果が出た。
妻は子を原告として、夫との父子関係がないことの確認を求めて提訴。
「科学的根拠に基づいて明確に父子関係が否定されれば、父子関係は取り消せるはずだ」と主張した。
民法772条は「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」(嫡出〈ちゃくしゅつ〉推定)と定めている。
この父子関係を否認する訴えを起こせるのは夫だけで、しかも、子の出生を知ってから1年以内に限られている。
今回のケースはこれにあてはまらないうえ、「夫がずっと遠隔地で暮らしている」など、明らかに夫婦の接触がない場合は772条の推定が及ばないとする、過去の最高裁判例も適用されない事案だった。
家裁の家事審判は、あくまで夫と妻が合意した場合に限り父子関係の否定を認めるが、今回はそれもなかった。
夫側は父子の関係を保ちたい考えで「772条が適用されるのは明らか。子への愛情は今後も変わらない」と主張。
民法の規定や従来の判例、家裁の実務を踏襲すれば妻の訴えが認められる可能性はないはずだった。
ところが一審の家裁は「鑑定結果は親子関係を覆す究極の事実」として妻側の訴えを認めた。
二審の高裁は子どもが幼く、妻の交際相手を「お父さん」と呼んで成長していることなども考慮。
家裁の結論を維持した。
◆キーワード
<嫡出推定>
民法772条は、妻が身ごもった時、夫の子と推定すると定めている。
妻が夫に隠して別の男性の子を身ごもった場合も、この規定により法律上は親子となり得る。
父を早く確定することが子の利益になるとの考えからだ。
ただ、この規定ができたのは血縁の有無が科学的に証明できなかった明治時代。
DNA型鑑定で血縁関係を確認するケースは想定されていなかった。」
嫡出推定が及ばないことを認めた最高裁昭和44年5月29日判決は↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54117&hanreiKbn=02
この判決を、単に「接触がない以上夫の子供が生まれる筈がないから」というふうに捉えれば、「DNA鑑定で夫の子供ではないことが明らかなのだから、嫡出推定は働かない」という結論に傾くことになると思います。
そうではなくて、「単に接触がないだけでなく、事実上の離婚状態だったこと」を重視するのであれば、今回のケースでは、「単身赴任中に過ぎず、嫡出推定は否定されない」という結論に傾くことになると思います。
血縁関係ない子の認知は取り消せるとした先日の最高裁判決は、前者的な発想のように思います↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/385815420.html
一方で、性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を女性から変更した男性と、第三者の精子を使った人工授精で妻が産んだ子供との間に法律上の父子関係を認めた最高裁決定は、特例法という特殊性があるとは言え、明らかに前者的な発想を否定しています↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/382816510.html
さて、どうなるのでしょうか。
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