以下は、朝日新聞デジタル(2014年1月5日)からの引用です。
「宮城県石巻市で2010年、3人を殺傷したとして死刑判決を受けた元少年(22)の裁判員裁判で、検事が証言内容を指示した疑いが浮かんだ。
事前に証人となる共犯者に、「(元少年の)犯行は計画的」と法廷で話すよう迫ったという。
ほかの事件でも検察が証言内容を事前に証人とすり合わせたとみられる事例が相次いでおり、弁護側や裁判所からこの手法を問題視する指摘が出ている。
証言内容をあらかじめ確認することを法曹関係者は「証人テスト」と呼ぶ。
録音・録画の対象ではないため、密室で証言が誘導される恐れがあると指摘されてきた。
宮城の事件の最大の争点は、2人の殺害に計画性があったかどうか。
問題となったのは、元少年の共犯とされ、服役中の男性(21)の証言。
男性は仙台高裁で昨年4月、「(計画的ではなかったと証言しようとしたが、証人テストで)だめだと検事に言われた」と述べ、一審・仙台地裁で偽証したことを認めた。
「証人テストの際、『調書通りに答えればいいんですか』と言うと、『そのほうがいいね』と言われた」と告白した。
男性は取り調べ段階では元少年が前日から殺害を計画していたと供述。
この通り証言すれば、元少年を死刑とする決め手となり得た。
男性は証人テスト時に検事から言われた指示に従い、供述調書の通りに法廷で証言。
10年11月の一審判決は元少年を死刑とした。
男性は、検事から「結果は重大で遺族も極刑を望んでいる」と説得されて事実と異なる供述をしたといい、この経緯を知った元少年側の弁護団の依頼で、男性は二審の仙台高裁で証人テストでの出来事を証言した。
これに対し検察側は「一審は総合的に判断して計画性を認めた」と反論。
二審判決は今月31日に言い渡される。
ゆがんだ証人テストは冤罪(えんざい)を生みかねない。
愛知県で08年11月に起きたコンビニ店の売上金窃盗事件。
被告の店員の有罪を立証するため、1年後の公判に出廷した店長は、事件発覚の経緯について、捜査段階とは異なる証言をした。
その理由を「証人テストで思い出した」と説明。
この変遷を名古屋地裁は不自然と判断して「誘導の疑いを否定できない」と無罪に。
検察側は控訴を断念した。
証人テストの場で、検察官が捜査側の見立てを証人に押しつける実態は明らかにされてこなかった。
朝日新聞は、相続税法違反事件をめぐって大津地検検事(当時)と証人との間で交わされた生々しいやりとりの録音記録を入手した。
<最高検の長谷川充弘・公判部長の話>
公判で真相を明らかにしていくためには、証人が法廷で記憶のまま証言することが重要だ。
供述調書に過度に依存することなく、適切な証人テストの実施に努めたい。
◆キーワード
<証人テスト>
刑事訴訟規則に基づき証人尋問前の証人に事件の事実関係を確かめる手続き。
取り調べ段階の供述調書を証拠採用することに弁護側が同意しなかった場合、検察側の証人を公判担当の検事が検察庁に呼んで実施する場合が多い。
記憶が薄れたり緊張したりして公判進行が滞ることを防ぐことが本来の目的。
取り調べと違って可視化の対象外。
裁判員裁判の導入で、裁判所からの実施要請は強まっている。」
我々弁護人が証人と接触しようものなら、偽証教唆罪だの証人威迫罪だのと言われるのに、検察官の場合には、「証人テスト」という名前で、当たり前のように行われており、刑事裁判の中で、幸いにして、検察官の指示によるものであることが立証出来ても、今回のように、「供述の変遷は不自然であり、検察官の誘導の結果である可能性を否定できない。」で片付けられるだけで、何のお咎めもなし。
しかも、何と、裁判員裁判の導入で、裁判所からの実施要請が強まっているとは、何のための裁判員裁判なのでしょうか。
今回の場合、証人とは言っても、共犯者な訳で、検察官の意向に逆らえば、かえって自分の罪が重たくなるのではないかというような思惑から、検察官が描いた筋書きどおりの調書に署名捺印させられたということなのでしょうね。
警察官にしても、検察官にしても、スムーズに調書を作成するために、被疑者には、色々なことを吹き込みます。
「彼らの言うことを、全面的に信用することなんて、到底できないよ。」とは、何度も言うのですが…。
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