以下は、SankeiBiz(2013.12.12)からの引用です。
「性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を女性から変更した男性(31)と、第三者の精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ長男(4)との間に法律上の父子関係を認めるかが争われた家事審判の抗告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦(たけひこ)裁判長)は「特例法で性別変更した男性は、夫として結婚できるだけでなく、婚姻中に妻が妊娠した子と法律上の父子関係があると推定される」との初判断を示し、長男の戸籍の父親欄に、男性の名前を記載するよう命じた。
決定は12月10日付で、5人の裁判官のうち3人の多数意見。
性同一性障害をめぐる父子関係について最高裁が判断するのは初めて。
家族の在り方についての議論に影響を与えそうだ。
民法772条は法律婚の夫婦について、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子(嫡出子)と推定する」と規定している。
決定によると、男性は特例法に基づく性別変更後の2008年4月に妻と結婚。
妻は第三者の精子提供を受け、09年11月に長男を出産した。
男性らは長男の出生届を東京都新宿区に提出したが、区が戸籍の父親欄を空欄にしたため、男性らが戸籍の訂正を求めていた。
最高裁第3小法廷は、性別変更者が「男性」として結婚することを認めた特例法の趣旨に照らして、「法律婚の主要な効果である嫡出推定規定を適用しないのは、相当でない」と判断。
「夫と子の間に血縁関係が存在しないことが明らかでも、それを理由に父子関係を認めないことは許されない」と結論づけた。
東京家裁は12年10月、「夫に男性としての生殖能力がないことは明らかで、長男は嫡出子と推定できない」と、申し立てを却下。
高裁も12年12月、「生理的な血縁がないことが明らかな場合は、推定規定適用の前提を欠く」とし、男性らの抗告を退けた。
男性は、同様に人工授精で生まれた次男(1)との間の父子関係確認を求める訴訟も大阪家裁に起こしているが、今年9月に訴えが棄却され、控訴中。事実上の争点は同じため、今回の決定が影響を与えるとみられる。
≪僅差の結論 家族の社会的実態を重視≫
戸籍上の性別を変更した性同一性障害の男性と、第三者の精子でもうけた長男を「父子」と認めた12月10日付の最高裁第3小法廷決定は、裁判官5人中、大谷剛彦(おおたに・たけひこ)裁判長ら2人が反対意見を述べるなど、僅差での結論となった。
多数意見は医療の進歩などで家族の在り方が多様化する中、血縁関係がないことが明白でも、家族としての社会的実態を重視した形だった。
民法の嫡出推定規定は子の身分関係を早期に安定させるために設けられたとされ、強力な効果を持つ。
ひとたび「夫の子(嫡出子)」と認められれば、これを取り消す「嫡出否認」の訴えを起こすことができるのは夫のみ。
期間も「夫が子の出生を知ったときから1年以内」に限られる。
小法廷の議論を分けたのは、性別変更を認めた性同一性障害特例法の「効果」が及ぶ範囲の捉え方だ。
戸籍訂正を認めた3人は特例法で結婚が認められた夫婦の間の子には通常の夫婦と同様、法律婚の「主要な効果」である嫡出推定が適用されると判断。
寺田逸郎(てらだ・いつろう)裁判官は補足意見で「血縁関係上の子を作ることができない男女に特例で結婚を認めた以上、血縁がないという理由で法律上の父子関係を否定することはない」との解釈を示した。
一方、反対意見の岡部喜代子裁判官らは「特例法は親子関係の成否に触れていない」と特例法の効果を限定的に解釈した。
法務省によると、今回の決定の当事者と同様に、性別変更をした男性の妻が実際に出産したケースは、これまで39件を確認。
その意味で決定が及ぼす直接的な影響は限定的とも言えるが、2004年以降、性別変更を認められた人だけで3500人超に上る。
法曹関係者の一人は「父子関係が認められないことを理由に、子を持つか悩んでいるカップルに影響が広がる可能性がある」とみる。
だが、大谷裁判長は反対意見で、今回のようなケースで父子関係を認めれば「現在の民法の解釈の枠組みを一歩踏み出すことになる」と指摘。
さらに「本来的には立法で解決されるべき問題に、制度整備もないまま踏み込むことになる」と述べたように、議論が尽くされたとは言い難い。
第三者からの卵子提供や代理母出産など、生殖補助医療の発展に伴い、現行法の想定しなかった「新たな家族」は次々と誕生している。
法整備も含めた早期の議論が求められている。
【決定骨子】
・性同一性障害特例法は、女性から性別変更した人を法的に男性と見なしている
・夫として結婚できるのであれば、妻が妊娠したときは夫の子(摘出子)と推定する民法の規定も適用される
・結婚を認める一方で、血のつながりがないことが明らかだという理由で規定の適用を認めないのは不当だ」
早速、裁判所のホームページに掲載されています↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83810&hanreiKbn=02
3対2の僅差とは言え、まさか認められるとは思っていませんでした。
私の価値観も、時代に追いついていないということなのかも知れません。
しかし、元々の性別が男性と女性の普通の夫婦であっても、事実上の離婚をして別居し、まったく交渉を絶って、夫婦の実態が失われていた場合には、嫡出の推定を受けません↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54117&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62797&hanreiKbn=02
死後生殖による父子関係も、認められません↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=33488&hanreiKbn=02
いわゆる代理出産の場合、卵子を提供して代理出産をお願いした女性との母子関係も、認められません↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=34390&hanreiKbn=02
当然のことながら、元男性が戸籍上の性別を女性に変更して結婚しても、出産することはできませんので、養子縁組は別として、母親になることはありません。
それなのに、なぜ、女性が男性に変更した場合にだけ、父子関係が認められるべきなのか。
近親婚が禁止されているのは、倫理的な問題だけでなく、遺伝的な問題もあるからだったと思うのですが、だとすれば、精子提供者が戸籍上わからなくて良いのか。
生まれてきた子供自身にとっても、精子提供者が誰なのかわからなくて良いのか。
腑に落ちないことばかりです。
やはり、慎重かつ迅速な立法的解決が必要だと思います↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/380302211.html
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